【アーリントン(米テキサス州)12日(日本時間13日)=四竈衛】エンゼルス大谷翔平投手(28)が、638日ぶりにリーグ本塁打トップに立った。

同地区首位レンジャーズ戦の7回に同点19号ソロ、さらに延長12回には勝ち越しの決勝20号2ラン。今季2度目、通算14度目の1試合2発で、アーロン・ジャッジ外野手(31=ヤンキース)を一気に抜き去り、ア・リーグ最速で20号に到達した。この日発表された球宴ファン投票の第1回中間発表では、リーグ全体でトップ票を獲得。真夏の祭典へ向け、13戦8発の量産モードに突入した。

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打球は豪快でも、強引さはなく、大谷は冷静だった。タイブレーク3イニング目となった延長12回無死二塁。通常なら、右方向へ引っ張って進塁させるのが最低限の役割。だが、内角を攻めてこないことを想定し、初球から真ん中高めのカットボールをインサイドからかち上げた。ミスショットなら得点どころか、走者も進まない。今季の着弾点では最も左に飛び込んだ決勝2ランは、リスク覚悟で仕留めにいった、大谷の勝負勘が呼んだ一撃だった。

7回の同点ソロも、冷静な読みが光る一打だった。初球、内角低めギリギリのチェンジアップをストライクと判定された。一瞬、首を傾けた大谷は、1度しか許されない「タイム」を要求した。「ピッチクロック」が導入された今季、ほとんどの打者は2ストライク後にタイムを取って配球を考える。だが、大谷はこの時点で勝負のタイミングを計っていた。

絞り込むのは、球種よりも、コース重視。続く2球目、ほぼ同じ内角低めに入る150キロツーシームを待ち構えたかのように振り抜き、左中間2階席へ突き刺した。今季最長タイ飛距離459フィート(約140メートル)の特大19号でジャッジと並び、この時点で21年9月12日以来、キング争いでもトップに立った。

試合終盤の同点弾と、延長戦での決勝弾。いずれも、中堅から逆方向へはじき返す、並外れた大谷のパワーだから描ける放物線だった。「打っているシチュエーションも良かったので、なおさらうれしいかなと思います」と、納得の表情で振り返った。

試合前、球宴ファン投票の中間発表があり、大谷はリーグ最多票でいきなりトップに立った。「本当にありがたいですし、それにふさわしいような内容を続けられるように頑張りたいと思います」。ただ、個人成績ばかりフォーカスされる状況は望んでいない。「敵地でのこの4連戦は、やっぱりみんな気合が入っていると思う。初戦を取れたのは、いい勢いにつながるんじゃないかと思います」。3月のWBCでも見せた勝利への欲求は、公式戦でも変わらない。地区首位レ軍相手に逆転勝利。決勝弾の直後、三塁側ベンチへ向かって左手を突き上げた表情に、大谷の本能が映し出されていた。