挑戦の先に成長あり。カブス鈴木誠也外野手(29)が、日刊スポーツのインタビューに応じ米大リーグ2年目を振り返った。WBCは左脇腹痛で辞退。出遅れたシーズンでも序盤は思うような結果を残せず、スタメン落ちも味わった。それでも日本人右打者で初の20本塁打。打撃3部門すべてで前年を上回り、シルバースラッガー賞の候補にも入った。浮き沈みのあった1年で見えたものとは-。胸の内を明かし、秘めた理想もにじませた。【取材・構成=前原淳】
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-米大リーグ2年目を終えて
鈴木 勉強になった1年でした。苦しんだシーズン前半も何かが変われば行ける手応えもあったんですけど、気持ちにムラがあった。自分では何がダメなのか分かっていたんです。
-WBC辞退の理由となった左脇腹痛など、コンディション面か
鈴木 コンディションではないです。技術よりもメンタル。2年目ですけど、環境が変わったことによるいろんなストレス、細かなところも気になったりして、方向性を見失っていました。みんなが悩むのと同じで、人間だったら気持ちの波はある。このままじゃまずいなと思っていたときに、手に取った1冊の本をきっかけに気持ちや目標を全部ノートに書き出すようにしたら、いい方向に行くようになりました。
-広島時代も書き出すことはしていた
鈴木 16年にもやっていたんですけど、だんだん「書かなくても分かる」となあなあになっていった。当時やっていたことがその本にも書かれていて、もう1回やってみようと思ったら、なかなか書き出せなかったんです。やってきたことの大切さがあらためて分かりました。
-肉体面では昨オフ、10キロ増量。カブス球団関係者も驚く肉体改造だった
鈴木 あれも良かったです。スイングは良かったし、動きも悪くなかった。ただ、動きを確保できない状態でトレーニングをし過ぎると、可動域がでなくなる。可動域が変わっても、体は動こうとするのでケガをする。それも、ひとつの勉強。みんなはいいとこ取りをしたがるけど、僕は1度決めたらすべてやる。あそこまでやったから大きくなれたし、強くもなれた。そして、可動域をおろそかにするとケガすることも分かった。けがをしたらもちろんしんどいし、悔しいけど、勉強になっていることもたくさんある。
-技術的には
鈴木 変えたというより戻したみたいな…。戻したというより、自分の感覚にしたという感じですね。こっちは手首を返さない打ち方が主流で、コーチもそういう教え。僕もこっちのやり方や打ち方を盗もうとしたんですけど、合わなかった。人から感覚のことを言われてもハマらないので、自分の感覚を大事にしようと決めたんです。練習したいと思ったらするし、打ちたいと思ったら打つし、眠たいと思ったら眠る。もう自分にわがままに、周りにどう思われてもいいという感じでやっていたら、いい方向へ行っていた。
-元ソフトバンク内川氏の言葉もヒントになったと
鈴木 ウチさんが来たときに「メジャーに行ったからといって、メジャーの打ち方で打つ必要はないんじゃないか」って言われたんです。こっちの投手に対応するため“強いスイング”をしようとしていたんですけど、日本のときのように“速いスイング”を意識するようにしたんです。「俺のスイングはこれだよな」と。もうこれでダメだったら仕方がないやって思えた。
-日本人の右打者で初の20本塁打。米大リーグでは特に本塁打が評価される
鈴木 僕は(大谷)翔平みたいに本塁打をたくさん打てる選手ではないですし、すべてに高いレベルでやっていかないといけないと思っています。打率2割8分も、物足りない。本塁打も20本ですけど、前半もうちょっと良ければもっと打てたと思う。でも現時点で「50発」というのは、ほぼ不可能に近い。翔平みたいに打球が飛ぶわけじゃないし、サイズも違う。もちろん目指したいと思っていますけど、やっぱり段階はある。現状は違うところにフォーカスしないといけない。
-自分を客観視して成長につなげる姿勢は、日本時代と変わらない
鈴木 客観視しないとダメでしょう。日本でも38発しか打ったことない選手がいきなり50発なんて言えない。勘違い甚だしい。高い目標は自分の中に“絶対にやってやる”と秘めておけばいい。“もっと君にはやることがあって、それをやればいつかは…”と思っています。奇跡が起きて打てても勘違いするだけなので、ちゃんと段階を上がっていく中で打てたらうれしい。
-打者大谷をどう見る
鈴木 強い。動きが強いし、スピードもある。まず、あの体のサイズを操っている時点ですごい。みんな体が大きければいいと思っているけど、その分、器用に扱うのは難しくなる。もちろんうらやましいけど、僕が一気に190センチとか2メートルになったら大丈夫なのかと思う。
-大型契約を結んだ
鈴木 夢がありますよね。でも、二刀流でやっている評価だと思う。もう今後いないんじゃないですか? 10勝以上して、50発打てる選手なんて。ベーブ・ルースよりもすごいわけですからね。
-ナ・リーグのドジャースに移籍。対戦も増える
鈴木 見ていて勉強になることはたくさんある。一緒にプレーしても楽しいですし、同学年なのですごく刺激になる。翔平が打ったら、俺も打たないとと思うし、翔平がバーンッと存在感を出してくれるので、すごくありがたいですよね。
-米大リーグ3年目。ひとつ区切りとなる
鈴木 レギュラーとして出ていたら区切りになると思いますけど、1、2年目はレギュラーを取るための時間だったと思う。僕の中では来季が1年目みたいな感じなんです。レギュラーとして頑張る1年目。もちろんダメだったら外されるので、気は抜けない。まずは来年しっかりやって、そこからの2年が大事なんじゃないかと思っています。
◆鈴木VS大谷 鈴木と投手・大谷との対戦は、16年日本シリーズ第1戦の1試合しかない。日本ハム先発大谷に対し、広島鈴木は3打席2打数2三振(1四球)と封じられた。鈴木はこのシリーズで18打数4安打、打率2割2分2厘で5三振と沈黙。広島投手陣は打者・大谷に16打数6安打の3割7分5厘と打ち込まれ、日本ハムに日本一を許した。NPB、メジャー問わず、鈴木と大谷の投打での対戦は公式戦では1度もない。大谷は24年シーズンで打者に専念するため、投手・大谷と鈴木の対戦は早くても25年となる。
◆鈴木誠也の23年
2月28日 左脇腹痛でWBC出場辞退
4月15日 ドジャース戦で今季初出場。第4打席で今季初本塁打
5月18日 アストロズ戦で2打席連続本塁打。前日最終打席から日本人初となる3打席連続本塁打
5月25日 メッツ戦で千賀と対戦。自身米大リーグで初の日本人対決は2打数1安打1四球
6月7日 エンゼルス戦で大谷と米大リーグ初対戦
8月9日 メッツ戦で4戦連続スタメン落ち。打率は2割4分9厘
8月28日 パイレーツ戦で3戦連続マルチ安打。直近10試合ですべて安打を放ち、打率を1分5厘上げる
9月23日 ロッキーズ戦で20号2ラン。松井(ヤンキースなど)、大谷(エンゼルス)に続く日本人3人目のシーズン20本塁打
10月1日 ブルワーズ戦に勝利もプレーオフ進出を逃し、2季目が終了
11月3日 シルバースラッガー賞のナ・リーグ外野手部門で最終候補入り



