<レイズ7-2ツインズ>◇20日(日本時間21日)◇トロピカーナフィールド

 【セントピーターズバーグ(米フロリダ州)=高宮憲治、鉄矢多美子】レイズがツインズを7-2で下し、球団創設11年目で初のプレーオフ(PO)進出を決めた。前年メジャー最低勝率からのPO進出は、91年ブレーブスに続く史上2球団目となる。岩村明憲内野手(29)は開幕から不動の1番打者としてチームを引っ張り、モヒカンの髪形をまねるチームメートが続出するなど存在感を示した。レイズの地区優勝マジックは6となった。

 岩村率いる「モヒカン軍団」が、ついにプレーオフ切符をつかんだ。最後のファウルフライをロンゴリアがつかんだ瞬間、選手は一斉に打球の落ちた三塁方向へダッシュ。珍しくフェアゾーンを外れて歓喜の輪ができた。栄冠に慣れていないチームらしかった。

 「ワールドシリーズに出るチャンスができたのは、これ以上ない喜び。1つ目の目標をクリアできた」。人生初のシャンパンファイトでびしょぬれになった岩村は声を震わせた。

 今季7度目の満員観衆が見守る中、完ぺきな試合運びだった。ペーニャ、ロンゴリア、フロイドのクリーンアップ全員が打点を挙げれば、エース左腕のカズミアーは大一番で6回無失点の好投。敗れても他チームの結果次第でプレーオフ決定もあったが、文句なしの勝利で決めた。

 チームの団結力は、髪形を見れば分かる。ヒンスキーら先発メンバーをはじめ、10人以上がモヒカン頭だ。黒星が続いた今月、流れを変えようとまずアップトンが髪を切った。15日のレッドソックス戦に大敗した後、さらに5人が続いた。ソフトモヒカンのマドン監督も含まれていた。この日は理容師がクラブハウスに呼ばれ、モヒカン希望の選手が列をなした。

 この流行の源が、昨年からこの髪形を続ける岩村だった。「アキ(岩村)を見習った。ついていこうと思った」とペレスらは口をそろえた。1番打者としてプロ魂を、何苦楚(なにくそ)魂を見せつけてきた岩村に敬意を払うことで、チーム全体を活気づかせようとしていた。

 シャンパンファイト終了後、岩村は再びグラウンドに向かった。なんとソックスのまま客席を駆け上がり、祝福のために残っていたファン数十人と直接ハイタッチをかわした。うれしいハプニングにファンも熱狂。「アキ」コールを繰り返した。「僕の気持ちです。応援してくれてありがとうというね。あそこまでやる選手、誰もいないでしょ」と笑った。

 創設から10年で地区最下位9度、4位1度という弱小お荷物チームが、一気に頂点を狙うチームへと上昇した。前年最低勝率からプレーオフに進出するのは、91年ブレーブスに続く史上2球団目。今季、チーム名のデビルレイズからデビルを取り除いたとたん、まさに「レイ(光)」が差し込んだ。【高宮憲治】