左ひざ前十字靱帯(じんたい)を負傷し、今季絶望と思われていたレイズ岩村明憲内野手(30)が、9月にも戦列復帰できる可能性が出てきた。岩村は22日(日本時間23日)、本拠地セントピーターズバーグで左ひざの手術を受けた。当初は再建手術が必要だと診断されたが、部分断裂だったために内視鏡手術でチーム医師からは6~8週間で野球ができる体に戻れると診断された。昨季、モヒカン頭でシーズン終盤を引っ張った岩村の復帰で、レイズは逆転連覇を目指す。

 麻酔で眠っていた岩村が目を覚ますと、すでに手術は終わっていた。担当医師で、内視鏡手術のスペシャリスト、ココ・イートン医師から聞かされた第一声が、岩村が自身のブログに記した「A

 miracle

 happened(奇跡が起きた)」という言葉だった。

 MRI(磁気共鳴画像診断装置)検査等では、左ひざ前十字靱帯(じんたい)はほぼ完全に断裂しているとみられていた。だが実際は部分断裂にとどまっていた。そのため他の体の部分から腱(けん)を採取して断裂した部分に移植するという「再建手術」は必要がなくなった。

 比較的簡単な内視鏡手術で前十字靱帯(じんたい)と、損傷していた内側半月板を修復。イートン医師は「6~8週間で野球の運動ができる」と太鼓判を押した。岩村も自身のブログの中で「今季最後の何試合かは出られる可能性が生まれた事は事実です」と喜びを表した。

 レイズにとっても、これほどの朗報はない。レ軍はここまでア・リーグ東地区4位。故障者リスト8人を出しながら貯金3と奮闘しているとはいえ、レッドソックス、ヤンキースの2強を崩すには、何かが足りない。岩村は今季はDL入りするまで打率3割1分、出塁率3割7分7厘の好調ぶりで好機を演出。昨年終盤は岩村のモヒカン頭をマドン監督までもがまねるほどで、リーダーとしてもリーグ制覇に貢献した。足りない何かとは「アキ」の存在にほかならない。

 加えて、今回の手術結果が、岩村の来季契約に及ぼす影響も見逃せない。タンパ在住で、長年レ軍を取材してきたAP通信のマーク・ディトラー記者は「レイズ側が持つ来季契約更新オプションを行使するかどうかは、アキのケガの程度によると思う。早い時期に、明らかに動けるようになっていれば、レイズにとって更新するリスクが減るだろう」と分析する。

 6~8週間で野球の運動が可能となり、その後、マイナーの試合で調整することを考えると、早くて9月上旬の復帰が考えられる。チームのV争いに貢献し、来季契約を勝ち取る-。そんな夢のシナリオが現実味を帯びてきた。