<オールスター:ナ・リーグ5-1ア・リーグ>◇12日(日本時間13日)◇チェースフィールド

 【フェニックス(米アリゾナ州)=四竈衛】ナ・リーグが逆転で2年連続の勝利を挙げた。0-1で迎えた4回裏、ナ軍の4番プリンス・フィルダー一塁手(27=ブルワーズ)が左中間へ3ランを放って逆転に成功。10投手の継投でア軍打線を1点に抑えて逃げ切った。MVP(最高殊勲選手)にはフィルダーが選ばれた。

 2人の息子の間で、パパは誇らしげだった。試合後のMVP会見。逆転3ランで試合を決めたフィルダーは、笑みを絶やすことなく言った。左腕ウィルソンの決め球をライナーで運んだひと振り。「カットボールだと思うが、左中間へうまく打てたね」。内容、価値とも、自賛して当然の一撃だった。

 今や名実ともにナ・リーグの看板打者となった大砲にとって、3回目の球宴で初本塁打だった。07年には50本塁打をマークし、初タイトルを獲得。09年には打点王に輝いたが、過去の球宴での活躍は地味だった。ただ、今年は意気込みを秘めて夢舞台に臨んだ。現在ブ軍はカージナルスと並んで中地区首位タイ。それだけにワールドシリーズのホームアドバンテージのかかる戦いは、例年以上に緊迫感を含んでいた。「我々は本拠地で強い。もし、ワールドシリーズに行けたら、それはすごい助けになると思う。MVPとホームアドバンテージが同時に取れるなんて、ちょっと格好いいよね」。

 もっとも、私生活では悩みもある。かつて阪神でプレーし、メジャーでも本塁打王を獲得した父セシルとは、ギャンブル絡みの金銭トラブルをキッカケに、数年前から絶縁状態。「父とはまったく関係ない。父のことを、うちには持ち込まないんだ」。実父との関係がこじれているだけに、この日の会見に同席した長男ジェイデン君(6)と次男ヘイブン君(5)を心配する気持ちは、人一倍強い。

 「妻と子供たちと一緒にこの場にいられて、とても幸せだった。素晴らしい時間を過ごせたよ」。副賞のクリスタルバットを手にはしゃぐ息子たちを見つめるプリンスが、もはや「フィルダーの息子」と呼ばれることはない。