<オールスター:ア・リーグ0-8ナ・リーグ>◇10日(日本時間11日)◇カウフマンスタジアム

 レンジャーズ・ダルビッシュ有投手(25)が出番なしも、収穫十分で初のオールスターを堪能した。延長戦に突入した場合の「予備」の要員に回り、登板機会はなかった。開幕から快進撃を続けたメジャー1年目でトップ選手たちと交わり、貴重な体験をした。新たな刺激を得て、13日(同14日)から再開される後半戦へと再スタートを切る。

 頂点に君臨した日本では味わえなかった感覚が、あった。ダルビッシュがブルペンで待機しながら、ゲームセットの瞬間を迎えた。延長戦に突入したケースだけの「条件付き」での登板機会を待った。日本人メジャーリーガーとして最年少25歳で選出はされたが、上には上がいた。尊重されていた日本球界から離れたことを、改めて実感する時間を過ごした。

 序盤から大差のビハインドを背負った展開。ブルペンも含め、1球も投げることなく晴れ舞台から去った。日本以上に選ばれることが栄誉とされるのが、メジャーの球宴。充実感はあった。米メディアの取材もシャットアウトし、レ軍広報を通じて「僕にとって初めてのオールスターで何人かの選手といろいろな話ができて楽しかった」とだけコメントした。

 マウンドに立てなくても間違いなく、注目選手だった。試合前の選手紹介では、地元テキサスと同じように「ユー!」の大合唱がスタンドにこだました。MVPを獲得したジャイアンツ・カブレラは前日の記者会見で、ア・リーグ投手陣で対戦を熱望する1人に指名していた。「もし彼が投げることになったら、オレは絶対に打つから」と鼻息荒く標的だった。異国のルーキーへ、本場の選手とファンの反応は鋭かった。

 最終投票の34番目、「最後の1人」で足を踏み入れたステージ。大型ビジョンに映されると、ぎこちなく小さく手を振って応えた。試合後に同じ控えに回ったナ・リーグ選手たちとの握手にも出遅れるなど、コミュニケーションの取り方にも四苦八苦していた。初夏の米国での初体験。14日(同15日)敵地でのマリナーズ戦が、後半戦の初先発予定。ほろ苦い一息をつき、挑戦の1年へ駆けだす。【高山通史】