型にはめてはアスリートは育たない。レンジャーズのダルビッシュ有投手(26)が22日、体罰問題で揺れる日本のスポーツと教育に一石を投じた。都内で行われたトークショーに特別出演し、定評あるトレーニング論などを展開。日米での体験談から「固定観念に縛られて、力を出し切れていない」と日本のスポーツ界に苦言を呈し、「好きにやらせることが子供の成長を促す」と父母の教育論まで雄弁に語った。

 ダルビッシュの金言に約500人の参加者がうなずいた。「アンダーアーマー」の日本総代理店ドームの新春パーティーに特別ゲストで招かれ、「言いたいことがあります」と話の締めに選んだのは、スポーツを通じた父母と子供のあるべき姿だった。

 ダルビッシュ

 子供がプロになってもらいたいと願う両親は多いと思いますが、自分の理想を押しつけてはいけない。野球なら好きなスイングをさせて、好きな投げ方で思い切り投げさせる。サッカーなら好きに走らせる。そうすることで、子供の成長を促せる。

 初めて米国でフルシーズンを過ごし、新たに学ぶことは多かった。型にはめないメジャー流の指導もその1つ。昨年10月にシーズンを終えてから、日本で公の場に姿をみせたのは初めてで、伝えたいことが自然と口に出た。日本選手の武器に「一番は繊細さ。細かいところに気付いて、それを実現できる力がある」と実感する一方で、「固定観念に縛られて、その力を出し切れていないところがある」とスポーツ界全般に共通する、旧来の慣習からの脱却を提言した。

 自身、2年目の備えは抜かりない。今オフも「プロである以上、甘えとか妥協は許されない」とストイックな練習姿勢は変わらず、日米を往復しながら肉体を鍛え上げる。ただ悩みは食の細さだといい、高校時代から20キロ以上増やした理想体重は101キロ前後だが、食べないとすぐに2ケタ台に落ちる。「食べることの方がつらい。(厳しい)トレーニングには耐えられるけど」と、サプリメントも手掛けるドーム社に新製品をリクエスト。司会進行で空回りした安田社長に「社長がこれで大丈夫ですか?」とダメ出しして会場の爆笑を誘い、最後までトークショーを盛り上げた。【中島正好】

 ◆ダルビッシュの家庭環境

 ともに米国に留学経験を持つイラン人の父ファルサさんと母郁代さんの長男として、自主性を重んじる家風で育った。生後から一定の時期までは家庭内の言語は英語だった。幼少時はアイスホッケーにも取り組んでいたという。米国でサッカー選手だったファルサさんは自分と同じスポーツを希望したこともあったというが、ダルビッシュの意思を尊重した。弟が2人いるが、三男賢太は俳優として活躍している。