<ア地区シリーズ:レッドソックス7-4レイズ>◇5日(日本時間6日)◇第2戦◇フェンウェイパーク

 レッドソックスの上原浩治投手(38)が7-4の9回から登板し、1回を無安打無失点2奪三振に仕留めた。11球すべてがストライクの快投で、日本人メジャーとしては01年の佐々木主浩(マリナーズ)以来となるプレーオフでのセーブを挙げた。チームはレイズに2連勝で、リーグ優勝決定戦進出まであと1勝とした。

 本拠地に響き渡る「コージ」コールも、マウンド上で集中する上原の耳には聞こえなかった。「自分の世界に入ってるんでね」。3点リードの9回表。「嫌な打者の1人」と言うジョイスを3球三振に仕留めると、あとは流れに乗るだけだった。続くロバトンも3球三振。最後はマイヤーズを一ゴロに打ち取り、超満員のファンの歓声を浴びた。

 全11球がストライクの驚異的な投球だった。投球間隔が10秒前後の快テンポで常にストライクを先行させ、相手打者に考える時間を与えない。しかも、速球、フォークともピンポイントの制球力。メジャー12年目のベテラン、ロス捕手が「何と言っていいか分からないが、とにかく本当に本当にすばらしい。これほどフォークを両サイドにきっちりと投げ分けられる投手を、今まで見たことがない」と驚嘆するほど、研ぎ澄まされた投球術を続けた。

 9月29日にレギュラーシーズン最終戦で投げた後は、紅白戦で調整したとはいえ実質中5日での登板だった。今季は登板間隔を空けすぎないことで好調を維持し、73試合に登板。ポストシーズン初登板にも「いつも通り」と、冷静だった。

 今やレ軍不動のクローザーだが、プロ入り当時から「雑草魂」をモットーにする上原は、今回も屈辱を起点に、はい上がってきた。シーズン途中、オリオールズからレンジャーズへトレード移籍した11年。中継ぎとして登板したプレーオフでは、救援投手として3試合に登板し3本塁打を浴びた。ワールドシリーズでは登録メンバーから外れた苦い思い出がある。「過去のことは忘れました。終わったことはどうでもいい。それより明日を見た方がいいですから」。踏まれて強くなった雑草が、日本人メジャーとして佐々木以来12年ぶりとなるプレーオフでのセーブをつかみ取った。

 投打のリズムがかみ合い、本拠地で連勝。08年以来5年ぶりのリーグ優勝決定シリーズ進出へあと1勝と迫った。「(王手は)かけただけで決まっていない。決まってから喜びたいと思います」。完璧な投球を見せても、試合が終われば過去のこと。完璧クローザーは、すぐに第3戦(日本時間8日、セントピーターズバーグ)を見ていた。【ボストン(米マサチューセッツ州)=四竃衛】