ウエスタン・リーグ首位を走る若虎軍団。その大きな要因は「走塁改革」にある。45試合が終了した23日までに、なんと75盗塁を記録。個人ではドラフト3位熊谷敬宥内野手(22)がリーグトップの20、ドラフト4位島田海吏外野手(22)が11盗塁をマーク。就任1年目の矢野燿大2軍監督(49)が掲げる「超積極野球」の裏側に迫る。【取材・構成=真柴健】

 「超積極野球」を掲げる矢野2軍監督の指揮で、阪神2軍がウエスタン・リーグ首位をキープしている。その強さが顕著に表れているのが盗塁数だ。45試合終了時点で計75盗塁をマーク。2位のソフトバンクは47盗塁で、実に28個差をつけている。昨年はシーズンで89盗塁。順調にいけば、夏を迎える前には上回る。

 矢野2軍監督 足を使うことが、一番変えやすいのかなと思って。どんどん積極的に背中を押してやることで、失敗からスタートが見つけられる。ファームは1軍に上げてやったり、選手の幅を広げる場。そこで消極的にやっていては何も身につかないから。

 失敗を恐れずトライすることで、選手は自ら課題を見つけ、学習する。その環境が大きい。2軍で20盗塁をマークした新人熊谷は、自信をつけた脚力を武器に、18日に初昇格。翌日19日の中日戦(ナゴヤドーム)で8回に代走でプロ初出場すると、いきなりプロ初盗塁を決めた。

 熊谷は2軍では自由に盗塁を許される「フリーパス」を持つ選手だ。

 熊谷 本当に行ける確率が高いときだけスタートを切っています。(盗塁は)自由にはなってますけど、絶対にセーフになる確率が高いときだけ。バッテリーの配球や投手のクイックの速さも考えながらです。負けてる場面でも「行くな」のサインが出ない限りは貪欲に狙ってました。

 同じく新人の島田も「フリーパス」を持つ。50メートルを最速5秒75で走り抜ける快足の持ち主は、自由盗塁が許されることで、新たな発見があった。

 島田 けん制に引っかかっても戻れる距離が自分の中にできた。ミスしたらいけないという気持ちもあるけど、それが大きすぎると思い切ったスタートが切れない。全部行くつもりで、その中でけん制だと戻るというスタンスに変わった。スタートで迷うと絶対にアウトになるので。

 試合展開によっては「走るな」の指示も出るが、基本的にはフリーだという。

 矢野2軍監督 ほとんど(盗塁を)止めたことはないよ。基本は勝負。アウトになったからといって何も言わない。どういうタイミングで何を根拠に走ったのかということは聞くよ。でも、全部セーフになることも難しいし、紙一重の部分もある。チャレンジできる環境にしてあげたい。

 失敗から学んで、着実に成長していく-。そんな若虎が昇格していけば1軍の戦いにも勢いがつく。