中日ブルペンが熱気にあふれた。沖縄・北谷キャンプ第1クール最終日の5日、少ない先発枠を争う4投手が競うように200球超え。今年は先発として開幕メンバー入りを狙う又吉克樹投手は直球だけでチーム最多の251球を投げる炎の投球。追随するように小熊凌祐投手も同球数に到達した。個々のレベルアップを求める与田剛監督も意識の高さに目を細めた。

「200です!」。捕手から次々と大台を示す掛け声が飛ぶ。18・44メートル先の投手たちは一様に顔を紅潮させ、汗をしたたらせていた。8人が同時に投げたブルペンは熱気でむせ返った。マウンド側にいた与田監督も口をはさむ余地がないほど、緊張感あふれる空間だった。

ひときわ迫力をあったのは右端にいた又吉だった。外角低めを狙った直球ばかり、251球。今キャンプのチーム最多を更新した。直球だけで投げきるのは相当の体力を要する。指先のマメをつぶしながら最後まで生きた球を投げた。

「直球の強さを確認しようと思っていた。(疲れで)無駄な力を入れる元気がなくなってからリリースポイントが安定した。あの感覚を忘れないように。自分で制御できるようにしたい」。サイド右腕は投げ込みの効果を強調した。

又吉はかつてのセットアッパー。昨年も中継ぎとして働いたが、与田監督の構想では今年は先発だ。17年にはプロ初の先発を経験。約2カ月で9試合に投げ、完封を含む3勝0敗、防御率2・63を残した実績がある。その後は中継ぎに戻っていたが、本来の輝きは失っている。「あれだけ迷惑をかけた。はい上がってきたなと思ってもらいたい」。強い気持ちを込める6年目のキャンプだ。

小熊も16年に5勝して以来、伸び悩んでいる。となりの又吉が先に投球を終了。小熊は与田監督がすぐ後ろで見つめる中、次々と球数を増やし、又吉と同じ251球で終了した。ブルペンを出たあと、又吉に突っ込まれると「おまえの球数なんて知らんわ」と返した。実際に偶然だったという。

「あいつはずっとこっちを見ていた。ライバル視していた。負けていられないですね」と又吉。今年は同じ先発として争う立場。昨年までとは違う形で、お互いを意識しているのは間違いない。

この日はほかにも笠原祥太郎が201球、柳裕也が200球と球数が増えた。与田監督は目を細める。「球数というよりも、目的意識が出てきているのが非常にいい。(投げ込みは)それくらい今覚えなければいけない、そういう感覚を強く持っているので、いい傾向」。

昨季13勝のガルシア(阪神)が抜け、柱がいない先発陣。競争による底上げが大きなテーマだ。第1クールを振り返った指揮官は点数やMVPの質問には応じなかった。

「まだ足りないのは、何とかレギュラーを取って、去年の悔しさを晴らしてやるという姿勢。もちろん間違いなく出てきてはいるが、他球団も毎日必死になって練習しているという感覚を強く持ってほしい。私自身が満足することはない。選手にはそういう気持ちをより持ってほしい」。まだまだサバイバルは序盤だ。【柏原誠】