背後霊人形で悪癖退散だ。後ろに誰かいる…楽天藤平尚真投手(20)が取りつかれたように腕を振った。1球1球フォームを確認すると、時折背後を気にした。

13日の楽天・金武町キャンプはざあざあの雨。ほの暗いブルペンで藤平の真後ろに黒い人影が浮かんでいた。怖いなぁ…怖いなぁ…。64球の投げ込みを終え「矯正用の『FUJIHIRAくん』です。テークバックの時に背中側に腕が入りすぎないよう、意識付けしています」とささやいた。

幽霊部員になりかけの道具が生まれ変わった。今キャンプから石井GMの発案で導入されたダミー人形。打者の内角を投げるイメージを養うため、楽天市場で購入されていた。だが、フォーム固めの投げ込みが中心のキャンプ序盤は打席に立つ機会はほぼ無し。恨めしそうにブルペンの片隅で立っていた。そこに目をつけたのが伊藤1軍投手チーフコーチ。「矯正用にいいな」と藤平専用の背後霊として、よみがえらせた。

恐怖の存在として目を光らせる。今オフ、自主トレを行ったヤンキース田中からも「フォームで腕が背中側に入りすぎている」と指摘を受け、右腕が体から大きく離れる悪癖を修正中。背後に立つ「FUJIHIRAくん」に腕が当たればコーチから叱りの声が飛ぶため「右手がしっかりした道を通ってないとダメ」と引き締めざるを得ない。

この日は投げ込みを終えた岸も背後から藤平の投球を見つめるなど、チーム内の期待の高さはピカ一。登板予定の16日のロッテとの練習試合に向け「悪い癖に目を背けていたけど、ボールが変わってきた」と手応えを口にした。目指す開幕ローテ入りへ、大きく化けてみせる。【島根純】