大胆シフトで、4番封じだ。日本ハム栗山英樹監督(57)が25日、オリックスとの開幕戦(29日、札幌ドーム)で、相手の4番吉田正尚外野手(25)を抑え込むための守備隊形「吉田正シフト」の導入を予告した。これまでも「投打二刀流」や「攻撃的2番」など、多様な選手起用で日本球界を沸かせてきた知将が、今季は批判覚悟の思い切った采配で、シーズンの幕を開ける。

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開幕を4日後に控え、日本ハム栗山監督の覚悟は決まった。2月の春季キャンプ前から温めていた、新たな作戦。その1つが、データ分析をもとに、相手打者によって守備位置を大きく動かすシフトの導入だった。「もちろん、やるよ。方向性は出ている」。25日、札幌ドームで行った全体練習を見つめながら、はっきりと口にした。

オープン戦でも、随所で驚きの守備隊形を試みてきた。DeNA戦では、昨季セ本塁打王の右打者ソトに対して、4人の内野守備を三遊間の深い位置にずらりと並べた。また、吉田正と同じ左の和製大砲4番筒香には、三塁手を左翼の位置に下げ、外野を4人で守る大胆布陣を披露。球場のどよめきを誘った。「ボールが行きやすいところに(守備が)寄っているだけだよ」と言うが、データが示す攻略の糸口を最大限に生かしたいという心意気が、指揮官には備わっている。

現在、存在するのは大きく分けて5つの守備シフトだ。<1>外野手4人<2>左打者に対し、遊撃手が二塁ベース横に位置<3>遊撃手が二塁ベースを越えて位置<4>全体の定位置を左右のどちらかに寄せる<5>三塁手が遊撃手を追い越し、二遊間に位置。緒方守備チーフ兼内野守備走塁コーチは「パターンや守備位置は、守る選手個々の能力にもよる。データはシーズン中にも蓄積していく」と、影響を受ける投手の性格も考慮して、柔軟に対応する構えだ。

オープン戦では想定外の打球が飛ばなかったため、シフトが裏目に出た場合の対処が今後の課題だ。遊撃手の中島は「どう動けば良いのか、まだつかめていない状態。送球の距離を頭に入れておくなど、準備が大事になる」と気を引き締める。栗山監督は「何であんなところに守っているんだとか、批判は絶対にある。全ての批判はこっちに向けてくれ。ひるまないようにやっていく」。真正面から、勝利への道を切り開く。【中島宙恵】

◆守備シフト 1946年にメジャー最後の4割打者テッド・ウィリアムズ(レッドソックス)を抑えるためインディアンスのブードロー監督が内野シフトを敷いたのが最初とされる。現在のシフト全盛期の生みの親はカブスのジョー・マドン監督で、レイズを指揮した2010年代初頭、相手打者の打球方向をデータ化、それに基づく守備シフトを頻繁に駆使した。