ボクシングWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(29=大橋)が過去最高の状態に仕上げ、39歳の対抗王者に引導をわたす。6月7日、さいたまスーパーアリーナでWBC世界同級王者ノニト・ドネア(フィリピン)との3団体王座統一戦を控える。25日に横浜市のジムで代表取材に応じ、ドネアを引退に追い込む意気込みを示した。元世界3階級制覇王者の八重樫東トレーナー(39)のフィジカル練習で長く悩まされた腰痛が解消し、万全な状態となりそうだ。

   ◇   ◇   ◇

約2年7カ月ぶりとなるドネアとの再戦を控え、井上の緊張感は高かった。リング内のミット打ちは長く、入念に続けられた。すべては3団体王座統一のために-。残り2週間弱だが、集中力は最高潮に近かった。「自分との戦いが(ドネアの現役)最後に、しっかり花道をつくれれば。自分はそんな思いで臨む」。圧勝劇で引導をわたすという確固たる自信をみせた。

手応えがある。「この時期の調整では、かなりうまくやれている」。昨年11月から導入した元世界3階級制覇王者八重樫トレーナーによるフィジカル練習を週2回ペースで継続してから約半年が経過。強化合宿も2度敢行し「足腰の強さを感じていますし、何より1番気にしている腰痛が八重樫さんのトレーニングでなくなっている。すごく効果は出ている」と手応え。16年9月のペッチバンボーン(タイ)戦ごろから6年近く悩む古傷の不安が解消されていると強調した。

井上の指導当初から八重樫トレーナーは「あまり詳細は話さないが、尚弥が何をしたいのかは見ていれば分かる」と“以心伝心”で練習内容を決めている。世界3階級制覇した両者だからこそ理解できるメニューを消化し、けが撲滅につなげている。大橋秀行会長(57)は「最近感じるのは足腰の強さ。下半身からくるパンチに強さをすごく感じる」と分析。パンチの破壊力も増しているという。

ドネア撃破で日本人初の3団体統一、さらに4団体王座統一に王手をかける。再びさいたまスーパーアリーナで迎えるドネア戦に「一種の運命だと感じる」と感慨深げな井上は「この先、4団体統一や(スーパーバンタム級で)4階級制覇するための試合。節目で最大限のパフォーマンスを発揮できるタイプなので自分に期待している」。腰の不安もない過去最高の井上尚弥が、日本人初の偉業を成し遂げる。【藤中栄二】

〇…井上の父真吾トレーナーはドネアとの再戦がKO勝利になるとの予想を口にした。2年7カ月ぶりに海外勢のパートナーを招き、スパーリング数は計100回に到達する見通し。万全の仕上がりと言い切る真吾氏は「前回でしっかり終わっている試合だと思っているが、ドネアがWBC王座を取り再戦になった。前回よりはっきりした形で、と本人もこだわっている。すっきりした形でいけるのかな」と自信をみせた。