高校生初のアマ7冠を達成した「怪物」井上尚弥(20=大橋)が、プロ4戦目で日本ライトフライ級王座に挑戦することが確実になった。24日に都内で日本ボクシングコミッション(JBC)のランキング委員会が開かれ、井上は同級6位から1位に昇格することが決まった。今夏に同級王者・田口良一(26=ワタナベ)に挑戦する見通しとなった井上は、国内最速タイ記録となるプロ4戦目での日本王座奪取に自信をみせた。

 吉報を聞いた怪物の表情には高揚感が漂った。2日前、JBCのランキング委員会が24日に開かれることを知った。大橋ジムで練習中、日本ライトフライ級1位となった知らせを耳にした井上は「案外早く(日本王座挑戦の機会が)来たなと思います。全力でいくだけです」とほおをゆるませた。

 今月3日の日本同級王座決定戦で新王者となった田口には、初防衛戦で指名試合が義務づけられる。挑戦者の第1候補は世界ランカーとなるWBA同級13位・角谷淳志(金沢)だが、関係者によれば挑戦を辞退する意向だという。正式辞退となれば挑戦権は日本ランク1位の井上に巡ってくる。「挑戦が決まれば、挑戦者らしく倒しにいきたいです」と意気込みを口にした。

 プロ4戦目で日本王座を奪取すれば、国内最速タイ記録。WBA世界同級6位でもある田口を倒せば、世界ランキング入りも確実。一気に世界挑戦への資格を手にする。プロ6戦目以内での世界王座奪取となれば、井岡一翔の7戦目を超える国内最速記録だ。井上は「それも頭の片隅にあります」と意識している。

 今月16日、プロ3戦目で佐野友樹(松田)を10回TKOで下した際、3回途中で右拳を痛めた。骨には異常がなく、腫れもひいているが、トレーナーの父真吾氏(41)は約1カ月程度は安静にさせたい意向。5月中に完治すれば、8月中には挑戦できる見通しだ。8月24日は真吾氏の42歳の誕生日。その父は「そのあたりで王座に挑戦してベルトを取ってくれたら最高のプレゼントですよね」と期待を寄せた。「目前にタイトルマッチがあるので、集中していきたい」と井上。今夏、日本王座挑戦で再び「怪物」ぶりを発揮するつもりでいる。【藤中栄二】

 ◆国内最速の王座奪取

 日本ジム所属では平仲明信がプロデビューから約10カ月となる86年1月、プロ4戦目で日本スーパーライト級王者・田名部雅寛を6回KOで下し、王座獲得に成功したのが最速記録。また辰吉丈一郎もプロ4戦目、90年9月に日本バンタム級王者・岡部繁に挑戦し、4回KO勝ちして王座を奪取。ほかにはジェームズ・キャラハンはミドル級、友伸ナプニはフェザー級の日本王座を4戦目で獲得。また東洋太平洋王座の国内最速記録は坂本孝雄、川益設男、伊藤辰史、小島英次、八重樫東の5戦目。なお世界王座の最速記録は、井岡一翔の7戦目となる。