6場所出場停止明けで大関経験者の西三段目22枚目朝乃山(28=高砂)に敗れた、西三段目20枚目錦国(22=芝田山)は「これから関取を目指す上で、大きな財産になった」と前向きに言った。

極度の緊張から、実力を発揮しきれなかったという悔しさも当然ある。それでも、口ぶりには、憧れの力士との真剣勝負ができた満足感があふれていた。

得意な型は朝乃山と同じく右四つ。「必ず差してくると思った」と警戒しながらも、鋭い立ち合いから先手を取られた。左手でまわしを取ろうとするもうまくつかめず、なすすべなく上手出し投げをくらい敗れた。

取組が決まって「昨日はワクワクが止まりませんでした」。初めて番付に当時のしこ名「矢田部」が載った19年夏場所は令和最初の勝ち名乗りを受け、多くの報道陣から取材された。序ノ口として初めて土俵に立った時のことを思い巡らしながら「こんなに大きな拍手をもらったのは初めてです。今まで一番緊張しました」と認めた。

悔しい敗戦だが、うれしさが勝る。実は目標とする力士が朝乃山。過去の取組集を動画でチェックし、自分の相撲に生かせないかと研究を重ねたこともある。「(朝乃山は)立ち合いの1歩、2歩目が速かった」と実感した。真剣勝負で得た学びを糧に、「これから稽古で磨いていけたら」と前を向いた。