それぞれのスポーツには特徴がある。が、相撲の特徴、特殊性は他のスポーツとは異なる。私は外国人に相撲について説明する際、5つの特色を語ることにしている。

まず、相撲は神事であること。ゆえに作法が厳格で、伝統を重んじる。2つ目は、円い土俵の輪の中で争い、先に外へ出れば負けとなること。レスリングや柔道では、試合場の外に出ても、中央に戻って再開される。

どんなに苦しいことがあろうと、歯を食いしばって我慢する。この輪から出されれば負け、踏みとどまらねばならない。社会集団の中にいて、その集団からはみ出さない、出て行けば困ることがある。集団の和を重視するという教え。もっとも土俵のルールができたのは江戸時代中期、まだ300年の歴史だ。

3つ目は、仕切り線があって、両力士は両手をついて、何の合図もないのに、いきなり試合を始めるルール。鐘や笛が鳴るわけでもなし、「はじめ!」の合図がない。審判たる行司は、ただ勝負を見きわめるだけ。

オレは立ってもいいが、相手もいいだろうか。両力士が互いにそう理解して立つ。いわゆる「仕切り」、これは阿吽(あうん)の呼吸と言われ、日本民族の独特のもの。自分さえ良ければよしとしない日本人、常に相手の立場をもわきまえる日本人、わが民族の心を表現している。

4つ目は、マワシ姿でお尻を人前にさらすこと。キリスト教では、お尻は悪魔の顔とされ、他人には見せない習慣。日本人男性の活力はお尻に宿っており、神々に奉納する。祭りの多くはフンドシ姿、お尻を見せてこそ男だ。

最後は、あまたあるスポーツの中で、最も速く勝負のつく競技という特徴。平均で約10秒で勝敗が決する速さ。だが、そのためにも毎日、熱心に稽古しなければならない。

相撲は、日本の身体文化の代表であり、古典である。横綱の千代の富士が米のホワイトハウスで土俵入りをする際、米政府は初めて水着着用なしを認めた。日本人の尻を見よ。