山梨・富士河口湖町の「ローソン河口湖駅前店」の屋根越しに見える富士山の撮影などのため、外国人観光客らが殺到し、同町が撮影できないよう黒幕を張る作業を開始したことについて、ローソンの向かいに位置する「井ビシ歯科医院」は1日、公式サイトで、これまでの経緯や事情の説明とともに「景観を損なうもので残念」とする長文の声明を公表した。

この件では、富士山がローソンの屋根に乗ったように見えることで、撮影スポットとしての口コミが、外国人観光客やタイの俳優らによって拡散。観光客が殺到した結果、ローソンや車道をはさんだ同医院の近隣で、交通の危険やごみの問題などが発生し、店舗営業や住民生活に悪影響が出ていた。

同医院は「井ビシ歯科医院としては、当初、ローソン+富士山という撮影を、静観していました。しかしSNSで徐々に人気がでて、予想以上の外国人観光客が押し寄せる事態となりました。そこで対策として、患者さんに迷惑がかからなければ思い、患者さんが通る通路だけは柵をし、歩道から私有地内での撮影は許容する形で様子を見ておりました」と、当初の状況を説明した。

その後の経緯も記述。「危険道路横断や柵内への侵入が多発し、富士河口湖町役場のコーン(“観光課”と書かれた緑コーン)を設置しました。もちろん注意看板や柵内侵入禁止を訴えておりましたが、次第に集まる数がキャパシティを超えて、一帯全てに埋め尽くすようになってしまい、また昼夜の違法無断駐車(わナンバー)、タクシーや大型バスの乗り入れにより、患者さんが駐車できずに通院できない事例が多発してしまいました」とし、「ゴミの放置や敷地内侵入、喫煙、駐車場や自宅軒下で食事などの迷惑違法行為が相次ぎ、屋上への不法侵入もあり、警察へ通報することも多々ありました。車の移動をお願いすると罵声を浴びせてきたり、タバコを火のついたまま投げ捨てられてしまったりは珍しくないことになってしまいました。今現在設置されている緑の柵は、当院が発注を依頼し、患者さんの通行路を確保するために設置しましたが、その中にも入り込み、通常の医療提供も困難な日もある状態です」と続けた。

同医院は「観光の一助となればと思い、私有地の一部を許可する形で提供してきましたが、私有地完全シャットアウトのように、柵を歩道ギリギリまで移動すると、車道に出て写真を撮影する人々が横行し、地元住民の方々が交通事故の加害者となりうる状況を作り出さないために、1日で、今現在の位置まで、緑の柵を戻したという経緯があります。注意しても、その外国人はすぐに移動し、また他の外国人が押し寄せるので、言っても言っても埒があかない状態です。違法駐車や喫煙を注意すると、逃げる人、逆に激昂する人もおり、恐怖を感じることもありますが、警察に通報しても、いなくなるわけではないので、こちらも打つ手なしの状態です」と状況を報告。「我々も写真を撮影することをダメとしているわけではありません。オーバーツーリズムという観点から言えば、私有地の限られたスペースにキャパシティを超える人が押し寄せるのと、そもそも観光地としての受け皿の準備ができていないスペースであることから、ゴミ問題や横断歩道や警備員の整備なども追いついていない状態と感じております。加えて、河口湖駅から徒歩数分という立地から、早朝から深夜まで外国人が絶え間なく押し寄せることから、地元の方も日本語で注意しても伝わらない現状もあります。駅前の主要道路ですが、地元の方々も、危険横断が当たり前のこの道を避けたいとの声もよく聞く状態です」と、近隣の様子も明かした。

幕を張るという対応については、町の判断によるものとあらためて説明した。「今回の黒幕は、我々を含め、地元住民からの要望になり、富士河口湖町役場(都市整備課、観光課)町が設置すると判断されたものです。当院としても、今現在観光客が押し寄せているスペースは、本来、足の不自由な方やご高齢の方の車寄せスペースとして活用しており、幕をすることで、裏からの車が出せなくなったり、敷地内活用スペースを失う結果となります。また黒い幕をすることで当院の入り口も車道から見えなくなり、当院としても景観を損なうもので残念な対策であります。しかし、今まで行った対策を上回る、考えられないマナーモラル違反、不法行為に対し、やむを得ない対策と考えております」とし、「黒幕を貼るくらいのことをしなければ、いつ事故が起きても不思議でない状態です。実際、数日前外国人観光客の意識不明となる重傷交通事故が河口湖畔で発生しました」と苦渋の心境を明かした。

同医院は「今回の黒幕は、期限が設定されているわけでなく、一時的な猶予のような対策かと思います」と想定した上で、「幕の設置の経緯や、詳細については、我々でなく、河口湖町役場へお問い合わせいただきますようお願いします」と記した。