主演男優賞ー中居正広「私は貝になりたい」
【受賞式記事】
登壇した中居はきょとんとした表情だった。「大きな賞をもらうのは、10年以上前の(テレビ番組)『ごきげんよう大賞』以来かな。今回受賞者や授与者、作品を見て、賞を授与されることの大きさと自分の小ささを感じました。紅白もそうだけど、大きい舞台になればなるほど事の大きさと自分の小ささを感じるんです」。だが、前年受賞者の木村が壇上に現れると硬い表情は一変。照れが入ったとはいえ、笑顔が戻った。
2人は同い年で高校の同級生。「指でツンツンと木村くんをつついて、テストの解答をそっと見せてもらいました」。同時期にバスケットボール部に所属したことも。木村との思い出について、一緒に映画観賞したこともあげた。「デビュー後『ゴースト』を見に行って、ボクが寝ちゃって。木村くんにズバリ『寝てただろ』って言われて、『寝てないよ』って言い返したこともありましたね」。
今は「話しても一言二言。メンバー同士で『お疲れさまでした ! 』って、今さらわざわざあいさつし合う仲でもないですから」。素っ気ない態度も、すべてを知り尽くした仲だからこそ。今年はSMAP結成から20年。SMAPとしての仕事以外で、木村とのツーショットは初めてだという。「こっぱずかしいです。一役者としての木村拓哉さん、という感覚もありつつ、メンバーの木村ちゃん、みたいな気持ちもあって、違和感がありました。でも昨年、今年とSMAPが取れたのはうれしいですね」。連続受賞をグループの活躍として喜んだ。
SMAP結成当初の個人活動は、中居がバラエティー中心、木村が俳優中心のイメージが強かった。木村は中居の本作における徹底的な役作りを最も近くで見てきた1人。完成版も観賞した。SMAP連覇を「不思議な気持ちですが、メンバーが演技を評価されて受賞するのはうれしい。刺激にもなります。撮影中やせこけて、必死にやってきたボロボロ感が伝わってきました。作品に対して責任をちゃんと果たした結果です。俳優をもっとやった方がいい」。壇上で中居と交わした握手には、エールと尊敬の念が込められていた。
本作は11月に約330館で公開され、1カ月が経過した。観客動員数は150万人を突破。館数もほぼ変わらず、客足は衰えない。来年1月末までの公開延長も決定。「1月に入ったら暇になるので、またキャンペーンをやりますよ」。
撮影から半年。役作りで丸刈りにした中居の髪もいつの間にか伸びていた。ビジュアルは「私は貝―」から離れたが、木村も評価した責任感から公開終了まで主演俳優の役目を果たすつもりだ。【近藤由美子】
[2008年12月29日 紙面から]
◆中居正広(なかい・まさひろ) 1972年(昭47)8月18日、神奈川県生まれ。88年結成のSMAPのリーダー。91年シングル「Can't Stop !! LOVING」でCDデビュー。映画デビューは93年「プライベート・レッスン」。02年「模倣犯」で映画初主演。ほか「シュート ! 」などに出演。ドラマは「白い影」「砂の器」など。仲間由紀恵とともに、今年3年連続5回目の紅白の司会に決定。165センチ。血液型A。
◆「私は貝になりたい」 高知のある町で理髪店を営む清水豊松(中居)と妻房江(仲間由紀恵)。豊かではないが、息子と幸せに暮らしていた。しかし、豊松に召集令状が届く。厳しい訓練が続いたある日、近くに米軍戦闘機が不時着し、米軍兵士が山中で見つかる。上長は豊松に、捕虜を殺すよう命令する—。フランキー堺さん主演で、58年に初めてドラマ放送され、その後映画に。再ドラマ化もされた。
日刊スポーツ映画大賞
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