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宝塚 ~ 朗らかに ~

宝塚 ~ 朗らかに ~

 夢の舞台を創り続けて100年あまり。時代とともにスターを生み、話題作を手掛けてきた宝塚歌劇団。華やかなステージを作り続ける裏側で日々、厳しいけいこと競争の中で切磋琢磨を続けている夕カラジェンヌの横顔を伝えます。

次世代リーダーの自覚/朝夏まなと

[2014年2月6日9時43分 紙面から]

笑顔でインタビューに答える朝夏まなと(撮影・加藤哉)
笑顔でインタビューに答える朝夏まなと(撮影・加藤哉)

 宙組男役スター朝夏まなとが、シアター・ドラマシティ(大阪市北区)公演「翼ある人びと-ブラームスとクララ・シューマン-」(8~16日)で、同劇場に初主演する。ベートーベン、バッハと並ぶ“3大B”の1人、19世紀の独作曲家ヨハネス・ブラームスの青年期を描く。100周年イヤーに入った劇団で、次世代トップ候補の1人としての期待も高まるが「ひとつずつ、丁寧にやっていきたい」。1歩1歩、着実に、祝祭年を進む。東京・日本青年館大ホール公演は2月26日~3月3日。

 ドイツ音楽の“3大B”の1人であり、ロマン派の作曲家、ブラームス。日本でもCMやドラマで多く楽曲が使用される天才だ。

 「私は凡人だから、天才にしか分からない深み、みたいな部分が難しい。知れば知るほど、自分とは感覚が全然違いますね」

 その笑顔は屈託がない。芝居は20歳前後の設定。裕福な者のたしなみだった音楽の世界に、そうではないブラームスが足を踏み入れ、屈折した感情も持ちながら才能を開花させる。

 「最初は割と無口。酒場でピアノを弾いて生計を立てたりしていたけど、出会いによって自立していく。だから、最初の方はセリフが少なくて、口下手な感じ。そこから、実は明るい性格なので、徐々に心を開いていくという感じです」

 音楽評論家でもあったシューマンと知り合い、その才能を認められ…と史実に沿って話は進んでいく。

 「内面は温かく、純粋な人なのに、最初はそれを見せない。でも、シューマン夫妻を通して、家族の温かさを知る。音楽をベースとした彼らとの絆もしっかり描かれ、それによって彼の長所が引き出されていく。成長物語になっています」

 役柄との共通点は、音楽を生業にしている点。自身は宝塚音楽学校から激しい競争を勝ち抜き、ミュージカルの舞台に立っている。

 「はい…まあ、似た部分はあるんですけど、天才って、何でもパパッとできちゃう人ってイメージがあって。私はそうじゃないから。彼の音楽に対する思いや、本当は自分が何をしたいのか悩むところは分かるなって思うんですけどね」

 最も異なるのは性格だ。なかなか環境に慣れないブラームスだが、朝夏は一昨年6月、花組から宙組へ異動を初体験し、すぐに新しい組に溶け込んだ。

 「環境の変化に抵抗はないですね! というか、組替えのときは、周りの皆さんが、ウエルカム! みたいな感じで受け入れてくれたので。そこで私が、壁を作って『私、こういう人なんです』と言ったら感じ悪いじゃないですか(笑い)。ありのままの自分で行かないとダメだって」

 開放的な性格は幼少期から。柔軟性がある、とよく言われたという。

 「子供のころも、クラス替えは大丈夫。(佐賀出身で)都会ではなかったので、みんなオープンで。自分も活発な子でしたから。だから(役柄の)口下手な感じが難しいんですよ」

 役作りのため、ブラームスの音楽を聴いた。

 「彼は口下手な分、音楽で会話をする感じなんですよ。そこが天才だなって思います。しかも、それをシューマン夫妻も感じているという。3人が音楽で会話をしているんですよね」

 ベートーベンを崇拝していたブラームスの音楽から、つかんだことがある。

 「彼の内面は複雑だな、と。ベートーベンが音楽界を一変させた後、その後の作曲家は、べートーベンに取りつかれ、悩みながら生きている。あらためて、そんな時代を感じました」

 これまであまり聴いていなかったクラシックに刺激も受けた。「普段は洋楽(が多い)。R&B、日本の曲も、韓国の曲も聴きますけど」。音楽の趣向にも柔軟性がある。ちなみに、朝夏を“推しメン”にあげる宝塚ファン、渡辺麻友所属のAKB48は…。

 「あははは! 意識して聴くことはないですけど、街中に流れていますから」

 役者の引き出しは着実に増えている。前作「風と共に去りぬ」で、役がわりでスカーレットを演じた。

 「スカーレットもですが、役がわりはけいこが大変で、ちょっと自信がつきました。切り替えとか。あれやったから、大丈夫だろうみたいな感じはありますね。でも、そりゃあ、男役の方がしっくりきます」

 経験と自身を胸に迎えた100周年イヤー。「元旦の鏡開きでも、世間の皆さんの注目度が高いとは感じました。今年は、すごく早く過ぎ去っていきそうな気がする。ひとつずつ、ちゃんと向き合っていきたい」。次世代リーダーとしての自覚も、しっかりと胸にある。【村上久美子】

 ◆翼ある人びと-ブラームスとクララ・シューマン-(作・演出=上田久美子氏) 若き日のヨハネス・ブラームス(朝夏)を主人公に、彼の才能を見いだしたシューマン(緒月遠麻)と、その夫人でピアニストのクララ(伶美うらら)と、3人の出会いから別れまでを描く。酒場のピアノ弾きをしていた青年、ブラームスは自作のピアノ曲を披露し、シューマン夫妻を魅了。シューマンは青年を自宅に住ませ、青年はクララにひかれる。複雑な3人の関係だったが、愛憎を越えて音楽で結ばれた絆があった。

 ☆朝夏まなと(あさか・まなと)9月15日、佐賀市生まれ。02年、88期生として入団。同年、星組「プラハの春」で初舞台を踏み、花組配属。05年「マラケシュ・紅の墓標/エンター・ザ・レビュー」で新人公演初主演。08年「蒼いくちづけ-ドラキュラ伯爵の恋-」でバウ・ワークショップ初主演。10年「BUND/NEON 上海」バウ単独初主演。12年6月、宙組組替え。同8月「銀河英雄伝説@TAKARAZUKA」で、新トップ凰稀かなめの盟友役。昨年9月「風と共に去りぬ」でスカーレット(役がわり)。身長172センチ。愛称「まなと」。

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