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映画この一本

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 洋邦問わず、日刊スポーツの映画担当記者がオススメ映画を紹介します。

澄んだ瞳でワルに徹するレオ様

[2014年2月2日8時45分 紙面から]

◆ウルフ・オブ・ウォールストリート(米)

 昨年の「華麗なるギャツビー」に続いてレオナルド・ディカプリオが成り上がりを演じる。ギャツビーには陰りも屈折もあったが、今回はワルに徹している。

 実在の株式ブローカー、ジョーダン・ベルフォード。ウォール街デビューの日に「ブラック・マンデー」に遭遇して失業する。が、不運はここまで。その後は詐欺まがいの手口でくず株を売り抜け、巧みな話術は富裕層の顧客も取り込む。気後れするところなく、26歳で年収49億円の身となる。

 志高く業界に入ったが、いつしか悪のささやきに負けて…というのならばいちるの親近感が湧くのだが、この男には最初からだまし取ることに罪の意識がない。キラキラと悪気ない表情でディカプリオは「ピュアな拝金主義」の皮肉を際立たせる。

 元モデルとの再婚、豪邸、クルーザー、コカイン、一夜に100人のコールガール…金の出入りは速度を増し、やがてはマネーロンダリングに手を染める。

 レモンと呼ばれる強烈なドラッグにも手を出す。全身がまひし、芋虫のようにうごめき、額の血管は破裂しそうに膨らむ。マーロン・ブランドに似てきた容貌。ロバート・デ・ニーロを思わせる熱演。39歳。あなたは本当に「タイタニック」のレオ様か。

 5度目のコンビとなるマーティン・スコセッシ演出はコメディー的な味付けで、はじけるようにテンポがいい。ウソのようなホントの話を得心させる。71歳にして精力的な仕事ぶりだ。

 FBIの手に落ちた主人公は司法取引で仲間を売り、20年の刑を3年に短縮。最後まで救いがない。

 それでも、憎みきれないのはディカプリオの瞳が終始少年のように澄んでいるからかもしれない。【相原斎】

(このコラムの更新は毎週日曜日です。)

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