原作・脚本・主演の佐藤二朗が、4月27日に都内で開かれた完成披露試写会で「結構、賛否が分かれる作品だと思う。たくさん死ぬし…ね」と口にした通り、映画はレストランでの無差別大量殺人から始まる。客の中年男が右手を振るうと客、店員問わず腹を刺され、首を切られる。鋭利な刃物による犯行にしか見えないが、防犯カメラ映像に映る男の右手に凶器は見えない。そんな不可解な怪物“名無し”が、11年前に万引の疑いで事情聴取を受けた山田太郎を名乗る男と一致。素性不明の遺棄児として保護された過去が発覚も、肝心の所在がつかめない中、無差別殺人が相次ぐ。

凄惨(せいさん)な場面が連続する作品だけに、観客が自ら選んで鑑賞する映画か配信にプラットフォームは限定されるだろう。そもそも佐藤は、着想したアイデアの映画化を志して5年前に脚本を執筆も、過激さと特殊な世界観から、お蔵入り寸前だった。それが編集者の目に留まり、漫画化され、映画化に至った経緯がある。映画館でしか見られないものを作ろうと、覚悟を持って脚本開発したことがうかがえる。一方で昨今、凶悪犯罪が後を絶たない中での公開に、模倣犯を生みかねないとの批判も出てきかねない1本だ。

ただ、単なる残酷な映画ではない。巡査が街角に捨てられた名無しと少女を保護し、山田太郎と花子と名付けて世話を焼く場面や、佐藤とMEGUMIが演じた、大人になった太郎と花子との絡みには、人間の情や心の動き、葛藤など、深い人間ドラマが描かれる。巡査を演じたSUPER EIGHT丸山隆平が語った通り「問題作と言われようと、世の中に届いて意味がある作品」だろう。【村上幸将】

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