昨年12月にくも膜下出血で倒れたカウンターテナー歌手米良美一(44)が、来月6日に仕事復帰する。3月末に退院後、リハビリに取り組んできた。このほど取材に応じ、再びステージに立てる喜びを語った。

 「神様に生きることを許された」。米良は、今の自分をそう表現した。

 昨年12月8日、自宅で意識不明の状態で発見された。「左部分のくも膜下出血」と診断され、緊急手術を受けた。意識は年明けに戻ったが、生死の境をさまよった。故郷宮崎に転院し、3月末に退院。その後は実家でリハビリに取り組んだ。「体調は倒れる前と変わらない。問題は喉の歌う筋肉です」。5月の連休明けに、発声の専門家が作成したメニューに従って歌のトレーニングを開始。「スポーツ選手が、けがから戻る時と同じ。私は『喉のアスリート』。急にやりすぎてもいけない。体と心の状態を見極めながら進めました。若いころは怖いもの知らずでしたが、ちゃんと元に戻るか不安でした」。

 周囲は「頑張って」と励ますが「根性の問題じゃない。『しなやかな感性』で歌えるようにならなくちゃいけない」と冷静にブレーキをかけた。「怠けたわけではなく、気が乗るまでは無理しませんでした」。喉の状態は「7割以上まで戻った」と笑顔で話す。

 来月6日に群馬・玉村町文化センターで作曲家宮川彬良氏(54)と共演する「ふたりの歌謡ショウ」が復帰ステージ。それまでの時間に感性を取り戻す必要があるという。273日ぶりの仕事復帰となり、「恋のバカンス」「ウナ・セラ・ディ東京」「若いって素晴らしい」などを歌う予定。「ここまで来られたのは奇跡。病気を抱えて乗り越えようとしている方に少しでも希望を感じてもらえば」。来月14日に「ヨコハマ・ポップ・オーケストラ」(神奈川みなとみらいホール)で神奈川フィルハーモニー管弦楽団と共演する。

 大きな夢もある。「次はお芝居に挑戦してみたい。歌は『一人芝居』だから、つながっているはず。ほとばしる感情を表現できる場に立たせてもらえれば」と燃えている。【小谷野俊哉】

 ◆米良美一(めら・よしかず)1971年(昭46)5月21日、宮崎県生まれ。幼少期より先天性骨形成不全症を患う。94年3月洗足学園音楽大を首席で卒業。96年にオランダ政府給費留学生としてアムステルダム音楽学院に入学。97年映画「もののけ姫」主題歌を担当。98年12月、日本アカデミー賞協会特別賞の主題歌賞受賞。15年映画「マンゴーと赤い車椅子」主題歌「Truth」を担当。家族は父信八さんと母京子さん。