綾瀬はるか(30)が主演女優賞に選ばれた。第28回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原プロモーション協賛)が7日、決定した。「海街diary」で、しっかり者の4姉妹の長女を演じて新境地を切り開いた。授賞式は28日、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで行われる。

 お祝いの花束を渡されると綾瀬は、ちゃめっ気たっぷりに喜んだ。駆けだすようなしぐさで「イエイッ!」とガッツポーズ。花束を高く掲げて「獲ったどぉ~」と叫んだ。誰もが知る、天真らんまんな姿だった。

 7年ぶり2度目の主演女優賞を射止めたのは、そんな素顔を封じた演技と存在感だった。父に捨てられ、母にも逃げられた3姉妹の長女を演じた。父の死を機に、異母妹(広瀬すず)を引き取って4人で暮らすことを決意する女性で、責任感の強さを感じさせる役柄だった。「是枝(裕和)監督には、4つの顔を描きたいと言われました。母親、姉、女性、そして娘としての自分です」。1人4役ともいえる難役と向き合った。「違和感も恥じらいもなくできたのは、役に入り切れたからだと思う」。

 劇中では、次女(長沢まさみ)や三女(夏帆)を姉として厳しくしつける場面がある。「自分にない一面だなと思っていたけど、演じるうちに、気付いたんです。自分もよくお母さんに『それ、ダメじゃん』って言ってるって」。実生活の何げない言動に役づくりのヒントを得て演技に反映させた。対照的に、広瀬には「すずの感情が出やすいように、たくさん愛情を注ぎました」と母親目線で見守った。今回、長沢は助演女優賞、広瀬は新人賞を受賞した。綾瀬がそれぞれの好演を引き出したともいえそうだ。

 30代に入って初めての主演映画は、女優人生の転機と胸を張って言える。「今まで母親みたいな役はなかった。自分がそんな年齢になったからこその新鮮な役ですね。何十年後でも見たいと思える作品になりました」。

 08年に「ICHI」「僕の彼女はサイボーグ」などで主演女優賞を受賞した。同賞の複数回受賞は、吉永小百合(3度受賞)に次ぐ2人目。女優として飛躍を遂げて、7年ぶりに授賞式のステージに帰ってくる。「7年前、覚えているのは隣の席の樹木希林さんが、お孫さん(内田伽羅)に『食べなさい、食べなさい』って料理を勧めていたこと。自分のことはあまり覚えてないなぁ」と笑う。記憶も飛んでしまうほど、多忙な7年間だったが、スクリーンで見せるその姿は、人々の心に残り続ける。

 ◆綾瀬(あやせ)はるか 1985年(昭60)3月24日、広島県生まれ。00年ホリプロスカウトキャラバンで審査員特別賞。01年ドラマ「金田一少年の事件簿」で女優デビュー。13年NHK大河ドラマ「八重の桜」に主演。同年NHK紅白歌合戦で司会を務めた。映画出演は「HERO」「ザ・マジックアワー」「ハッピーフライト」「おっぱいバレー」「プリンセストヨトミ」「ホタルノヒカリ」「あなたへ」など。165センチ。血液型B。

 ◆海街diary 鎌倉に住む香田幸(綾瀬はるか)佳乃(長沢まさみ)千佳(夏帆)3姉妹のもとに、15年前に家族を捨てた父の訃報が届く。葬儀が行われた山形で、幸は初対面した異母妹すず(広瀬すず)を引き取り、同居を始める。4人が穏やかに暮らす中、3姉妹の母(大竹しのぶ)が現れる。是枝裕和監督。

 ◆主演女優賞・選考経過 「栄枯盛衰が激しい世界で、息の長い活躍」(福島瑞穂氏)と綾瀬が、1回目の投票で過半数獲得。「いつものひょうひょうとした演技に、悲しさが出る円熟の演技」(石飛徳樹氏)などの樹木希林を推す声を抑えた。