中村勘九郎、中村七之助、尾上松也らが出演するコクーン歌舞伎「夏祭浪花鑑」(30日まで、渋谷・シアターコクーン)が、さまざまな工夫を凝らして上演している。

上演10分前、祭りばやしが聞こえ、舞台に人が集まってくる。入道雲にせみの声。夏祭りの1日に放り込まれたような気分になる。舞台上は、わいわいと会話していたり、物を運んでいたりと、日常の1コマ。中には消毒スプレーを持っている人もいたりと、虚実入り交じった空間が出来上がっていた。そのままの流れで、すっと本番に入っていく。

義理人情に厚いが血の気の多い団七と、義理に厚いがゆえに起こる事件や悲劇を描いた。2時間超、休憩なしのスピード感とテンポの良さ。団七の生き方のような疾走感あふれる舞台だった。

新型コロナウイルスの緊急事態宣言発出中ということもあり、舞台上で人が密にならないよう、かつ、たくさん人がいるように見えるような演出が施されていた。群衆場面ではいろんな手法を使われていたし、その手法が舞台になじむような感じになっていたし、興味深く見た。

特徴的だったのは、明かりの使い方だ。長い柄の先のろうそくの火を差し出す面(つら)明かりや、がんどうと呼ばれるスポットライトのような明かりなどが登場した。登場人物を浮かび上がらせ、緊張感を増す場面で使われている。

勘九郎が最後のあいさつで「楽しんでいただけましたか?」と問いかけていたが、本当に、没入できた空間だった。