シンガー・ソングライター山下達郎(68)が25日、都内で行われた日本映画専門チャンネル「日曜邦画劇場」で7月4日放送の映画「人情紙風船」(山中貞雄監督)4Kデジタル修復版の、番組収録に参加した。テレビには出演はしないスタンスで、今回も写真と音声のみの出演だが「人生の1本」と公言する作品が、最高画質でテレビ初放送されることを受け「生まれて初めて」映画の番組に出演。1時間にわたり映画への深い知識と愛を語り続けた。

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山下は放送開始20周年&1000回スペシャルゲストとして登場。自らのイメージの拡散を嫌い、テレビへの出演はせず、必要な場合のみ写真と音声のみの形で出演してきた。関係者によると、テレビへの出演はベスト版「OPUS」を発売した12年以来だという。司会のフジテレビ軽部真一アナウンサーから理由を問われ「放送1000回で『人情紙風船』。来なきゃいけないな」と語った。

東京・池袋出身で映画好きの両親の影響で映画を見始めた山下は、80年代に元東大学長の蓮実重彦氏のエッセーで「人情紙風船」を知り、当時走りのレンタルビデオ店で借りて見た。「全てが美しい。筆舌に尽くし難い。何十回見たか分からない。全く飽きない。30代で見た映画で最高のカルチャーショックを受けた」。

4Kデジタル修復版が昨年、東京国際映画祭で上映された際も足を運んだ。「(映像にかかっていた)膜が取れた。ほぼニュープリントに近いと解釈してもいい。当時、ご覧になった方はこういう感覚で見たんだと。日本の映画は状態が悪く半ば失望していましたが、良い時代になりました」と賛辞は止まらなかった。

18年のアニメ映画「未来のミライ」の「ミライのテーマ」など、映画の主題歌を作ることも少なくないが「映画を見て感動したら、テーマソング、どうしようかなと考えると結構、面白い曲が出来る」と架空の曲作りが名曲の秘訣(ひけつ)だと明かした。「映画は文学よりも音楽に近い。非常に音楽的。本を読むより映画にインスパイアされる方が多い」とも語った。

映画は好きだが、自ら撮るつもりはないという。「映画は僕なんかが作ることが出来るようなものではない。総合芸術ですから。音楽を手伝うのだって結構、ストレスフルで劇伴音楽も難しいなと思う。自分で撮りたいと思ったことはない」と断言し、苦笑した。【村上幸将】

◆「人情紙風船」 歌舞伎の河竹黙阿弥が作った世話物の通称「髪結新三」をベースに、三村伸太郎氏の脚本に山中貞雄監督が手を加えて映画化し37年に公開。38年に日中戦争で出征した中国で、28歳の若さで戦病死した山中監督の遺作。俳優河原崎建三の父長十郎さんと母で岩下志麻の伯母に当たるしづ江さん、中村梅雀(65)の祖父中村翫右衛門さんらが出演。同監督の映画で、ほぼ完全な形で現存しているのは35年の「丹下左膳余話 百萬両の壺」と翌36年の「河内山宗俊」含め3本のみ。