思いを込めて務める。テレビ東京期待のルーキー、中根舞美アナウンサー（23）が同局系新サッカー応援番組「サタデーナイトJ」（土曜午後11時半）のMCに就任した。同局新人が入社約半年でスポーツ番組のレギュラーMCに抜てきされるのは02年大橋未歩アナウンサー（45、現フリー）以来21年ぶり。局、そしてサッカー界の期待も背負う注目株に大役への思いを聞いた。【松尾幸之介】
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10月7日の初回生放送直後。Jリーグ関係者らへのあいさつを済ませた番組の“司令塔”は小走りで取材部屋に入ってきた。「お待たせしてすみません！」。デビュー戦の自己採点を聞くと「半分もとれてないかなという感じです」と息を整えながら語り「スタッフさんたちとのチームワークを感じながら迎えられたのはすごく楽しくて。緊張100％ではなかったので、そこで50点。MCとしての仕事の部分でマイナス50点ですね」と振り返った。
主にJリーグのハイライトなどを、毎回変わる解説者と共に深掘りしながら届ける新番組。多くの関係者が見守る中で迎えた初回は、J2清水エスパルス－ジュビロ磐田の静岡ダービーなどを紹介した。初代ゲストは磐田、藤田俊哉スポーツダイレクター（51）と清水の森岡隆三アカデミーヘッドオブコーチ（48）の元日本代表コンビ。トラブルなく30分間を走りきったが、終了間際の対応を反省点に挙げた。
「残り30秒とかで、このままゆったりと締めるか、3人で話すか。終わらなかったらどうしようと守りに入ってしまいました」。ピッチとは違うアディショナルタイムのない戦い。「まだまだ判断力が足りないなと思いました」と唇をかんだ。
サッカーに関わる仕事をする。思いはずっと抱いていた。中学2年の頃に見た2014年W杯ブラジル大会。初めてまともに目にしたという大舞台で本田圭佑や香川真司ら“ザックジャパン”の戦う姿に心打たれた。決定打は中学3年時の第94回全国高校サッカー選手権。PK戦までもつれた3回戦、東福岡－市船橋の一戦で、味方を鼓舞し、最後まで諦めずに戦う両チームの光景を見て、心は決まった。
高校はソフトテニスでの推薦入学が決まっていたが、両親、顧問に頭を下げた。「サッカー部のマネジャーがしたい」。反対されたが「自分の意思を貫いた初めての出来事だったかもしれません」。思いは強かった。
就職活動中もサッカーへの思いを繰り返し口にしていたという。テレビ東京は60～90年代にかけて当時、画期的だった海外サッカーを扱う「三菱ダイヤモンド・サッカー」などを放送してきた歴史がある。しかし、地上波サッカー番組は中継含め近年は減少傾向にあり、同局も現在は「FOOT×BRAIN」のみ。そうした現状は理解しており「いつかあるかもしれない」と備えていたが、今年でJリーグ開幕30年。節目の年に、CGなどの最新バーチャルプロダクション技術も駆使した新番組ができることになった。
「本当に急だったので、びっくりしましたし、幸せですね」と驚き「キャリアも積んでいないので、これから評価していただけるように。勘違いせず、地に足つけて頑張ります」と引き締めた。
初回放送終盤に応援で駆けつけたJリーグ野々村芳和チェアマン（51）は、中根へのメッセージとして色紙に「本気で楽しむ」としたためた。「番組を通して成長してくれたら」と声もかけられたといい、中根は「刺さるお言葉でした。長く続く番組にしていきたい」と力を込めた。
今後はクラブ練習や試合などへも取材へ向かう。胸の中にあるのは「どの視聴者にも楽しんでもらえるような、誰も置いてけぼりにしないアナウンサーになりたい」という思いだ。裏方でチームを支えた高校時代、下馬評を覆そうと戦うチームメートの姿に気付かされる部分があった。「1本のシュートやブロックにも、各選手たちの気持ちがこもっています。そうした選手の心境や人柄、頑張っている姿勢をみなさんに伝えたいと思っています」。
3次元CGで映し出される番組セットイメージは、近未来のサッカースタジアム。メンバー表や順位表も立体的な表示で視聴者を楽しませる。「よく見ていただくとスタジアムの屋根が開閉していたり、細かいところにも凝ったつくりになっているんですよ」。令和の“最新ピッチ”の上で、中根が躍動していく。
◆中根舞美（なかね・まみ）2000年（平12）6月13日、愛知県出身。小学生でバスケットボール、中学ではソフトテニスに打ち込む。大学時代はサッカーなどスポーツデータを収集・分析して伝える「データスタジアム」のYouTubeチャンネルにも出演。21年「学生アナウンス大賞」ファイナリスト進出を機にアナウンサーを目指し、23年テレビ東京入社。6月28日の「テレ東音楽祭2023夏」でデビュー。「みんなのスポーツ」や競輪中継などにも出演中。学生時代は名古屋グランパスの試合に通い、ゴール裏で頻繁に観戦。あだ名は「まー坊」。血液型A。
