中村勘九郎、中村七之助らが出演する「平成中村座 十月大歌舞伎」(25日まで、東京・浅草寺境内仮設劇場)が連日の満席で、盛況だ。

「平成中村座」は、00年に勘九郎、七之助の父で故中村勘三郎さんが、浅草の地に立ち上げた。江戸時代の芝居小屋の雰囲気で芝居を楽しんでもらいたいという劇場、興行で、これまで浅草をはじめ国内外で開催されてきた。今回は4年ぶりに浅草の地に帰って来たとあって、注目度も一層増している。

中村屋の興行ならではのことが初日から起こった。前日まで、東京は37日連続の雨に見舞われた。しかし、最強の晴れ男で知られた勘三郎さんの力なのか、初日は抜けるような青空で、暑いくらいだった。開場前のあいさつで、勘九郎も「晴れましたね」と笑って、天を指さした。

晴れて良かったなと思ったのは、劇場の後方が大きく開き、外の景色を取り入れる演出があるからでもあった。今回は、中村橋之助、中村福之助、中村歌之助の3兄弟による幕開きの演目「初帆上成駒宝船(ほあげていおうたからぶね)」で取り入れられた。舞台の向こうに青々とした木々が見え、さらにその向こうには、道を行き交う人が見える。舞台を楽しみながら、現実世界ともつながっている雰囲気を味わい、不思議な感覚になる。勘九郎も「中村座の機構を生かした演出で、一気に中村座の世界にお客さまをいざなうことができる」と話している。

注目の演目ばかりが並び、どれも見逃せないなと思うものばかりだった。第1部では、勘九郎と、長男勘太郎、次男長三郎が、親子3人では初めての「連獅子」。勇壮な毛振りのクライマックスでは拍手が鳴りやまず、終わっても興奮冷めやらず、という客席の雰囲気だった。

第2部「助六曲輪初花桜(すけろくくるわのはつざくら)」では、勘九郎が初役で助六をつとめ、ヒロインの揚巻は七之助がつとめた。助六と揚巻は、歌舞伎演目の中でも人気のカップル。華やかでかっこよくていちずな2人を、勘九郎と七之助で見られるとは。

江戸で一番の粋な男、助六の有名なせりふ「きせるの雨が降るようだ」は、モテてしょうがないという状況を言っている。舞台、花道と客席が近い平成中村座だけに、花道横から、2階席から、きせるが降ってきそうなイメージが頭の中に浮かび、せりふが生き生きとしてきた。

勘九郎が助六を教わった片岡仁左衛門が、興行最後の3日間に「助六-」に出演する。七之助が「見られたら奇跡」と言っていたが、言葉通り、即完売の超レアチケットになった。

平成中村座は毎回、見逃せないもの満載で、観客を楽しませることを第一に行っていることがよく分かる。

ちなみに、仮設劇場だからといって、トイレの心配は皆無。十分な数に加え、スタッフさんのすばらしい誘導とさばきも必見です。【小林千穂】