先日開催されたジャパンインターナショナルボートショーにおいて、第1回日本マリン賞の文化人部門賞を頂いた。ジュニアヨットクラブ連盟の会長を22年間務め、子どもたちの育成に尽力したご褒美、とのことで、ありがたく賞状を頂戴した。

振り返れば私自身も小学校3年生の時、江の島に創設されたジュニアヨットクラブに父の強い勧め(ほぼ強制)で2期生として入学した。ヨットというと、大海原を白い帆を張って帆走、というイメージを持つ方が多いようだが、実際はそんな優雅なものでは全くない。まさに板子一枚下は地獄、危険と隣り合わせの命懸けのスポーツだ。1人乗りの小さなディンギーを与えられた9歳の私は操船するどころではなく、船が傾く度に浸水してくる海水をくみ出すのに必死だった。当時、よく見た悪夢は船幽霊。そう、柄杓(ひしゃく)で船を沈められるというあの怪談だ。

大波をかぶったり、強風で転覆したり、投げ出されそうになったり、と散々な目に遭ったが、海の恐ろしさ、残酷さ、魅力、そして果てしない恵みを幼いころから体験できたことは私の人生の宝だ。毎週末、行きたくないと駄々をこねる私を、家から蹴り出してくれた親父に感謝している。

日本といえば車、のイメージが強いが、実は世界でもトップ3に入る造船大国でもある。最先端工学と職人技が融合した日本の船は極めて高品質で、世界中の船乗りたちから大きな信頼を得ている。しかしレジャーボートのジャンルではやや華美さに欠けるきらいがあり、富裕層の目は欧米のメーカーに向きがちだった。それが今年は、トヨタが技術の粋を極めた海のレクサスとも言うべきラグジュアリーメガクルーザーを発表し、熱い視線を集めていた。

四方を海に囲まれ、良質な船がある日本なのだから、ヨット競技でも世界に羽ばたく選手が育つことが私の長年の夢だ。再来年、私の競技ヨット仲間の1人である鈴木晶友君がヴァンデ・グローブ2028という世界最高峰の外洋ヨットレースに挑戦することが正式に決まった。これは単独、無寄港、無補給で地球を一周する過酷なレースで、日本では今回マリン大賞を受賞した白石康次郎氏が完走している。鈴木選手の無事と健闘を祈りつつ、彼に続くセーラーの育成にこれからも寄与して行きたいと願っている。