当初の勢いには陰りも出てきたと指摘されるとはいえ、依然高水準にある高市早苗首相の支持率とのアンバランスさが指摘される、自民党。圧勝した2月の衆院選の後も、注目された地方選挙を取りこぼすことが続いてきた。そんな自民党にとって、「27年ぶりのポスト奪還」と位置づける重要選挙が、まもなく始まる。6月21日に告示される東京都杉並区の区長選挙だ。自民は、区議会議長も務めた元区議の大和田伸氏(45)を擁立。大和田氏は「アップデート杉並」を掲げて活動を始めている。
前回2022年の杉並区長選は、劇的な幕切れだった。3期12年務めた当時現職の田中良氏(65)を、新人の岸本聡子氏(51)がわずか187票差でやぶり初当選。その前年、2021年の衆院選では、同区を含む東京8区で長年議席を守ってきた自民党の石原伸晃元幹事長が落選し、立憲民主党(当時)の新人吉田晴美氏が初当選するなど、ドラスチックな動きが起きていた地域。昨年の東京都議選では、裏金事件で非公認となった都議会自民党の幹事長経験者も落選するなどしたが、2月の衆院選東京8区では、自民の門寛子氏が吉田氏から議席を奪った。
そんなタイミングでの、今回の区長選。大和田氏の選対本部長代理となった門氏は、「区長に押し上げるまで私の(衆院選の)戦いは終わっていない」としている。
杉並区長選で、自民党が推した候補が勝ったのは1995年が最後。1999年の区長選で山田宏氏(現在は自民党衆院議員)が自民推薦の現職を破って初当選し、山田氏の退任後も民主党などの推薦を受けた田中氏といった「非自民」系の区長が当選を重ねた。
自民党が杉並区長選で候補を推薦するのはその1999年以来、27年ぶり。「区民との対話」を掲げて前回初当選した岸本区政の刷新を訴えており、陣営関係者は「今回はこれまでの区長選とは違い、杉並の未来を左右する重要な選挙。自信と責任をもってお示しした候補者だ」と訴える。
先月31日に開かれた大和田氏の総決起大会で、井上信治都連会長は「なんとしても勝たせてもらいたいし、区政を(岸本氏から)奪還していくことが区民のためになると信じて取り組んでほしい」と、集まった1000人超の来場者に訴えた。杉並に母の出身校があるという縁を持つ片山さつき財務相も応援に入り「やってやれないことはない。27年できなかった『自民党』と書いてある区長をつくろうじゃありませんか」と、ハッパをかけた。大和田氏は「みなさまとともに杉並を変えたい。今でも前でもない新しい区政を」と訴えた。
自民党は、圧勝した衆院選直後の石川県知事選で推薦した現職が敗れるなど地方選挙で負けが込み、特に東京では深刻だ。直近でも、昨年の都議選は大敗し最大会派から転落。今年は3月の清瀬市長選で推薦の現職が共産系新人に敗れ、4月の練馬区長選では、他党とともに推薦した、小池百合子都知事に近い尾島紘平氏が敗れる「練馬ショック」が起きたばかりだ。
「練馬ショック」の傷は今も深く、党内では「どこかに油断があった」との声も漏れる。「『高市人気』は特異なもの。有権者の自民党そのものへの評価はあまり変わっていない」と話す関係者もいる。一方で、5月31日に投開票された新潟県知事選では、推薦した現職が3選された。この結果が、「地方での負け癖」(自民党関係者)を変えることに期待もあるが、取材すると「地域や候補者の顔ぶれなどの事情が結果には出る。自民党だから勝てるという構図には、まだなっていない。杉並でも現職は強い。まだ情勢は厳しい」との声も聴いた。
その現職、岸本氏は区長としての公務を抱えながら、活動を始めている。前回の選挙では野党共闘がフル回転し、市民らを中心とする「草の根支援」が、超僅差(きんさ)の勝利を支えた。6月に入って岸本氏陣営の街頭活動を取材すると、本人は公務で不在でも多くの支援者が集まり、道行く人への呼びかけを続けていた。
岸本氏の陣営では、6月7日に総決起大会を予定しているが、この日は大和田氏の陣営も集会を予定。告示まで2週間を切り、選挙ムードも高まってきている。
杉並区長選には、前回岸本氏に惜敗した田中氏、国際ビジネスコンサルタントで新人の増田義彦氏(68)、政治団体「日本結束党」の新人、上梨裕奨(ゆうすけ)氏(29)もすでに立候補を表明している。投開票は6月28日だ。【中山知子】(ニッカンスポーツ・コム/社会コラム「取材備忘録」)


