5月21日に発足した自民党の新たなグループ「国力研究会」。来秋に控える自民党総裁選を前に、再選を目指す高市早苗首相(自民党総裁)の党内基盤強化が大きな目的とされ、麻生太郎副総裁が最高顧問としてにらみをきかせ、昨年の総裁選で高市首相と戦ったライバルたちも発起人に取り込んだ体制は、事実上の「高市派」と位置づけられている。当初は、参加するかしないかで高市首相への距離感をめぐり、党内の色分けが進むとの見方もあったが、参加を呼び掛けるお知らせは全議員に行われ、必ずしも高市首相と近くはない議員も含めて多くの議員が参加。全議員(417人)の約83%に当たる347人が入会し、もはや「何が何だか意味が分からない」(出席者)集まりになった。
関係者の間には、逆に「不参加者リスト」なる文書まで出回ったとされ、そのリストに名前が記された一部議員は自身のSNSで理由を説明するなど、「主流派」から抜け落ちないような努力に腐心する動きも。「親高市」の議員には、勢力を誇示する動きが演出でき、関係が微妙な議員にとっては、「抱きつき作戦」で自分たちが色分けされる空気を薄めることができた。野党関係者から「さすが自民党」と皮肉まじりの声も出る新グループの旗揚げイベントではあったが、会場で取材をしてみると、「出席することに意義があった」(関係者)という言葉に納得するようなシーンに多く出くわした。
会場は、議員会館の会議室の中では多くの収容人数が可能な場所だったが、立ち見もいた。出席者の確実な把握に向けてか、受け付けには「本人」「代理」の二つの名刺入れが用意された。名刺は、出席したという明確な「足跡」になる。「本人は来ません」などと断って、秘書ら関係者が受け付けをすませるケースも少なくなく、2月の衆院選で初当選した議員の姿も多かった。
会の開始は午後4時。参院厚労委員会などの委員会と開催時間が重なっていた。そのため、開始からだいぶ遅れて駆け込んでくる議員もいた。発起人の1人、有村治子総務会長は自身のXで、中曽根弘文氏、山谷えり子氏とともに、発起人でありながら委員会のため出席がかなわないことを事前に告知。それでも会場に駆けつけ、報道陣の取材を出入り口で受けた。同じく発起人の小泉進次郎防衛相は、カメラのフラッシュの中、記念講演を行う米国のグラス駐日大使や麻生氏と言葉をかわした後、開始前に会場を後にした。
一方、グループの幹事長に就任した萩生田光一幹事長代行や、代表となった加藤勝信元財務相があいさつし、グラス大使の講演が始まるまでの間に、退席してしまう人もいた。講演がメインイベントだったはずなのに。やはり最低限、会に出席したという「足跡残し」の側面も漂っていた。
当初は「選ばれしメンバー」によるグループを目指したとされるが、党内の8割超が参加し、普通の党の会合と変わらない景色に。入らないとヤバいんじゃないかという「踏み絵」への不安が、ここまでの膨張につながったとみる向きは多い。「脆弱(ぜいじゃく)」と指摘されてきた高市首相の党内基盤は強いという、視覚的な演出もできた。「『主流派』づくりを目指したとされる麻生さんらが、雪崩を打って議員が集まることまで見越していたとしたら、かなり高度な戦略だ」とうがった見方を口にする人もいた。
自民党は、「数の力」の重要さを知っているからこそ、失った政権も執念で取り戻してきた。かつては「一致結束・箱弁当」と、立ち位置が同じ議員の結束力の強さが表現された旧竹下派などのような派閥もあった。ただ、こうした議員の集まりの強さは、勢力を維持してこそ発揮されるということ。もし目に見える形で人数が減るようなことがあれば、集まりの意味合いにも影響してしまうからだ。
今回の「国力研究会」に関しては、初回会合にこれだけ多くの議員が集まったことで一定の目的は果たされた感もあり、「2度目の会はないだろう」と話す関係者も少なくない。萩生田氏はあいさつで「報道では政局を期待する声もあったが、みんなでスクラムを組んで政権を支えようという会だ。それなら両院銀装会でいいじゃないかという声もあるが、両院議員総会ではなかなか勉強はできない。タイムリーに内閣と党が心を一つに前に進んでいくための結節点だ」と訴え、発起人の1人も「(参加者が)それぞれの信念、問題意識を持って活動ができればいいのではないか」と述べたが、次に会を開くにも、350人規模が集まれる会場選びだけでも大変だとする声も聴いた。
政界関係者は、こう話す。「2度目の会合があるとすれば、次の(来年秋の高市首相の再選がかかる)総裁選の前ではないか。それまで全員が、今後の総理の様子を見極めるでしょう。本音は別にあっても『勝ち馬』に乗り遅れたくない自民党議員の『総主流派願望』が、いかに強いか。それがはっきりしたということだけでしょう」。【中山知子】(ニッカンスポーツ・コム/社会コラム「取材備忘録」)


