将棋の最年長棋士、加藤一二三(かとう・ひふみ)九段(77)が20日、東京・千駄ケ谷で行われた竜王戦6組昇級戦で98手で高野智史四段(23)に敗れ、現役を退くことになった。2016年度の名人戦順位戦で最も下のクラスであるC級2組から降級。同組から陥落すれば60歳で定年という年齢制限があり、残る棋戦全てに敗退した時点で引退という規定がある。

 午前10時から始まった対局は、高野四段の猛攻に防戦一方。午後8時10分、投了した対局室を出ると、足早に自ら手配したタクシーに乗り込んだ。異例の終幕に日本将棋連盟では、常務理事の森下卓九段(50)らが事情説明の会見を行った。

 加藤九段は「(引退になりますが)話はありません」などとコメントを発表。しかし午後10時ごろ、気持ちの整理がついたのか、自身のツイッターに「幸せな棋士人生をありがとうございました」と書き込んだ。

 福岡県出身で1954年、当時最年少の14歳7カ月でプロデビュー。昨年12月に藤井聡太四段に抜かれるまで破られなかった。「神武以来の天才」と呼ばれ、42歳で名人を獲得。タイトルも通算8期獲得した。通算1324勝1180敗。数々の名勝負を繰り広げた名棋士は、最後まで伝説を残した。