NHKの上田良一会長は5日の定例会見で、13年7月に首都圏放送センターで勤務していた佐戸未和記者(当時31)が長時間労働で過労死したことに「残念な気持ちでいっぱい。労災認定を受けたことを大変重く受け止めている」と話した。さらに「31歳という若さで娘を亡くしたご両親の心情は察するに余りある」と述べ、働き方改革を進めると強調した。会長自身はまだ直接、遺族への謝罪をしていないとし「労災認定後に当時の首都圏センターの責任者が謝罪した。先月、ご両親を招いて、働き方の研修会を行った際、放送総局長が謝罪した。機会を頂ければ私の気持ちも直接伝えたい」と話した。

 当初は遺族の代理人を通じ、遺族が公表を望んでいないと知り、配慮した対応をしていたという。ただ、NHK側がこの夏の命日に遺族の自宅を訪ねた際、考えが少し変わっていたという。編成局計画管理部部長は「そもそも労災認定後に首都圏放送センターの責任者が自宅を訪ねた際に、謝罪を申し上げたと認識していた。ただ、この夏の命日以降、ご両親と話し合いを続ける中で、ご両親がNHKとしての正式な謝罪と受けとめていないと知った。そういう中で、9月末の(再発防止の)研修会にお招きした際、放送総局長らが謝罪した」と説明した。それまで再発防止に努めてほしいという要望だけが寄せられていたと認識していたという。

 同部長は「この夏以降、ご両親の思い、本音がどこにあるかなどを理解し、今回の公表に向け、互いに思いを1つにする形で作業を進めてきた」と説明した。

 取材陣からは、遺族が求めていたのは局内の周知とされるが、周知してこなかったのでは、との指摘も。同部長は「ご両親が公表を望んでいないと伝えられていた。その中で内部周知は難しい状況だった。情報管理をしながら再発防止の対策の研修は徹底してきた。ただ、ご両親からすると対策のための研修で、名前や過労死認定の詳細を伝えていないのは不徹底だと、この夏以降、伝えられた」と説明した。その後は名前を公表して再発防止に努めているという。