東京地検特捜部は19日、日産自動車のカルロス・ゴーン会長(64)を、同社の有価証券報告書に自らの役員報酬を約50億円少なく記載した疑いがあるとして、金融商品取引法違反の疑いで逮捕した。

カルロス・ゴーン容疑者の代名詞となったのが「コストカッター」「コストキラー」だ。ミシュランの南米、北米の責任者として業績を上げ、42歳でルノーの上席副社長にヘッドハンティングされると、工場閉鎖、調達先の集約などコストカットでルノーを再建。その腕を買われ、99年、2兆円の有利子負債を抱え、破産寸前だった日産に最高執行責任者(COO)として迎えられた。

日産でも主力の村山工場を閉鎖し、グループ全体で2万1000人をカット。系列にとらわれない部品調達などで経費を削減し、2年後の01年には黒字転換。03年には有利子負債を完済した。同年、米ビジネス誌フォーチュンは「25人の最強経営者」の1人に選出している。

英語、フランス語、スペイン語など5カ国語を操り、年に15万マイル(約24万キロ)、日仏間を移動していると、その精力的な行動ぶりを紹介された。息抜きは自らハンドルを握って運転する時間だと明かした。家族を伴って来日し、家族を大切にしているとされたが、「ゴーン家の家訓」という著作を日本で出版した「最も信頼できるパートナー」のリタ夫人と離婚。今春、ドメスティックバイオレンス(DV)疑惑を週刊誌で報道されている。

◆金融商品取引法 04年のライブドア事件などを受け、金融取引を公正なものにするため、証券取引法を全面改正し、06年に成立した。有価証券報告書の重要な事項に虚偽の記載をした者は「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、または併科」と刑事罰を定めている。