東京電力福島第1原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東京電力の旧経営陣3人に対する論告求刑公判が26日、東京地裁(永渕健一裁判長)で行われ、元会長勝俣恒久被告(78)元副社長武黒一郎被告(72)元副社長武藤栄被告(68)にいずれも禁錮5年が求刑された。

検察官役の指定弁護士は「10メートル盤(主要施設の敷地の高さ)を超える津波襲来が予見できたにもかかわらず、自らの責任を否定し、具体的対策、指示、実行を怠った。結果の大きさ、地位、立場、権限の大きさ、注意義務懈怠(けたい)の大きさに、有利に斟酌(しんしゃく)する理由もなく、何ら反省もしていない」と厳しく指摘した。勝俣被告らは表情を変えることはなかったが、禁錮5年は業務上過失致死傷罪の法定刑の上限。

勝俣被告は、被告人質問で09年2月の「御前会議」で14メートルを超す津波に関する報告を聞きながら、原子力に関する専門的な事項は分からず、所轄部署に任せていたと主張。会長職についても業務執行権限がないと主張している。指定弁護士は「専門知識がないなら、なおさら専門的知見を持つ者に綿密な報告を求め、経営判断に生かす義務があった。議案提案権があり、一定の権限を有していた」と退けた。

27日の公判では遺族の代理人弁護士が意見陳述する。来年3月、弁護側が最終弁論をして結審する予定。

◆強制起訴 09年に導入。検察官が決めた不起訴処分に対し、11人の市民からなる検察審査会が「起訴すべき」と2度議決すると必ず起訴される制度。市民感覚を反映させる狙いがある。検察官役は裁判所が指定した弁護士が務める。