新型コロナウイルスの感染が拡大する中、献血の協力者が減少している。日本赤十字社は、政府が小中高校の臨時休校の要請やイベント開催の可否の検討を企業に求めるなどの基本方針を出した2月25日から同29日までの5日間で、当初の計画から5793人の献血者が不足したと発表した。

全国で感染拡大が続き、不要不急の外出を控える動きが高まる中でも、成分献血を含め毎日約1万3000人の献血協力は必要だ。そのため、日本赤十字社は2日、ツイッターで「献血協力者の深刻な減少が続いています!」「皆様の献血が必要です」などとSOSを発信した。

ツイートは、リツイートが1万回を突破する大反響で都内の献血ルームは出足を戻しつつある。一方、全国で稼働し献血量全体の55%を占める献血バスは出先となる大手企業の休業、イベントの休止が相次ぎキャンセルが続出しており、回復は急務だ。

4日夕方、東京都赤十字血液センター新宿東口駅前献血ルームには、30人弱の献血協力者がおり盛況していた。日本赤十字社血液事業本部の瀧川正弘経営企画部次長は、その要因として

<1>ツイッターでSOSを出したことへの反響

<2>18年10月末にリニューアルした献血ウェブ会員サービス「ラブラッド」の会員に向けての直接告知

を挙げた。

献血ルームに協力者が多数、集まれば感染拡大のリスクはあるが、可能な限りの対策を講じている。平素から入り口にアルコール消毒液を置き、協力者には手指消毒を徹底的に呼び掛けている。また献血の前には、普段から書面による問診に加え、医師による診察があり、そこで体調が悪い協力者は発見できる。スタッフには出勤時に体温の計測を義務付け、献血ルームの除菌も徹底してきたが、今回の事態を受けて、協力者にも入場時に体温測定を実施し、37・5度以上の場合は献血を断っている。

また、日本赤十字社は電話、公式サイトかラブラッドのサイトで、献血の日時を予約することを推奨している。新宿東口駅前献血ルームには、SOSツイート翌日の3日に86人、4日は106人の協力者が足を運んだ。協力者が一時期に集中した場合、混雑するが、予約制にすることで混雑は避けられる。

加えて、血液(血液製剤)は有効期限が定められている。期限が短い血小板製剤は採血後4日間、検査時間を除くと使用可能な時間は3日間程で、赤血球製剤でも有効期限は21日間だ。献血がひとときに集まっても、使用期限を過ぎた血液は患者に適切に届けることができない。瀧川次長は「感染拡大のリスクを避ける意味でも、血液を安定供給するためにも予約制は有効です」と語る。

問題は、全国で続く献血バスのキャンセルだ。特に3月に入ってから集中しており、2日現在で735カ所に上る。施設の中には、新型コロナウイルスの感染者が出たため、施設全体が使用不可となり、キャンセルとなったケースもあるという。瀧川次長は「職員で代替地を探しています。名乗り出てくれるところがありましたら、ありがたい。最寄りの各血液センターに、お問い合わせいただければ」と、献血バスの派遣先を全国から求めている。

これまでも、大きな震災などを経験してきたが被災地以外の場所では問題なく献血できた。それが新型コロナウイルスは全国で拡大が続いており、瀧川次長は「今回は全国で、今までと状況が違う。それにしても、まさか、こんな状況になるとは。でも、輸血を必要としている患者さんが不安を感じないよう、血液を安定供給していきたい。年間76万人の方にご協力いただかないと安定供給はできない。しっかり対策したい」と語った。【村上幸将】