東京都知事選は5日、投開票され、現職の小池百合子氏(67)が再選を果たした。東京都庁の元職員で、「都知事」などの著作で知られる佐々木信夫中央大名誉教授(行政学)に、小池氏の1期目を分析してもらい、今後の展望について話を聞いた。

◇  ◇  ◇

1期目の小池さんは都議選までは勢いがあった。石原都政以降の負の遺産をえぐり出し、見える化を進め、都が変わりそうだと期待を持たせた。しかし、希望の党を立ち上げて高転びに転んでからは、いかに自分の身を守るか、きゅうきゅうとしていただけではなかったか。イベントにこまごま顔を出し、親しい都議の都政報告会に出席しては参加者と握手していた印象が強い。公約の「七つのゼロ」も達成したのは「ペット殺処分ゼロ」だけで、あとは「待機児童ゼロ」に△がつけられる程度だろう。希望の党で絶望に落ち、東京五輪を都知事として迎えるため、潜って選挙運動していた小池さんを浮かび上がらせてくれたのはコロナ禍だ。

来年の東京都議選は「次点バネ」もあり、自民党が第1党に戻り、崩壊過程に入った都民ファーストの会は3分割される。2期目の小池さんは自分が生き残るため自公に軸足をかけるだろう。ただ、五輪はどうなるか分からない。都知事というポストには関心があるが、都政には関心がない小池さんは来年秋以降、国政に戻ることを考えるのでないか。自民党の二階敏博幹事長への接近の仕方を見ると、自民党に受け入れられる形をつくり、後継者のいない二階派を継承することを考えているのではないか。

コロナで、面積が0・6%の東京に1400万を超す人が集まる一極集中問題が改めて浮かび上がった。団塊の世代が後期高齢者となる2025年はすぐそこだ。コロナ対策で財政調整基金は取り崩され、財政立て直しも急務。問題は山積しており、このままでは来年秋に、都政は真空状態になりかねないと懸念している。(聞き手=中嶋文明)