藤井聡太2冠(棋聖・王位=18)が豊島将之叡王(竜王=31)への挑戦権を獲得した。26日午前10時から都内で始まった将棋の第6期叡王戦挑戦者決定戦で、斎藤慎太郎八段(28)を午後5時2分、114手で下した。藤井は叡王戦初登場。豊島の挑戦を受けて、掛け持ちとなる王位戦7番勝負とは立場が入れ替わる。注目の5番勝負第1局は7月25日、東京都千代田区「江戸総鎮守神田明神」で開幕する。

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藤井が斎藤の先制攻撃をうまくいなして、かわしたかと思うとガッチリ受け止める。攻め手が緩んだ瞬間を見逃さず、反撃に転じる。あとはリードを広げる一方。5月まで名人戦7番勝負に挑戦していた斎藤を投了に追い込み、叡王戦初登場を決めた。「序盤に軽率なところがあった。うまく攻め込まれて苦しい時間が長い将棋だった」と冷静に振り返った。

叡王戦は相性が良くなかった。17年は本戦入りしたが、深浦康市九段に大逆転負けした。翌18年も斎藤に本戦初戦で敗れている。19年は七段予選の初戦で村山慈明に黒星を喫した。タイトル保持者として臨んだ今期、長沼洋、師匠の杉本昌隆、広瀬章人を下して八段予選を突破。16人による本戦でも行方尚史九段、永瀬拓矢王座、丸山忠久九段、斎藤とタイトル戦登場経験のある先輩棋士を撃破して、挑戦権を得た。

現在、渡辺明名人の挑戦を受ける棋聖戦5番勝負は連勝し、防衛まであと1勝としている。来週29日からは豊島の挑戦を受ける王位戦7番勝負が始まる。それに掛け持ちで叡王戦5番勝負が加わった。

豊島との対戦成績は、1勝6敗と分が悪い。デビュー1年目の17年8月、棋王戦挑戦者決定トーナメントで敗れて以来、昨年10月の王将戦挑戦者決定リーグ戦まで6連敗だった。今年1月の朝日杯準々決勝でようやく初勝利を挙げた。「かなり手ごわい相手。こちらも頑張って盛り上げられるようにしたい」と話す。

1年前、史上最年少で初タイトルとなる棋聖を獲得した3日後に18歳となった。誕生日前日会見で、「強くなりたい」と抱負を語った。たくわえた力を試すにはまたとない相手。王位戦も合わせた最大12番にも及ぶ頂上対決で、今後の将棋界の勢力分布図が明らかになる。【赤塚辰浩】