史上最年少での初防衛、九段昇段、おめでとう-。快挙を達成した藤井聡太棋聖(王位=18)の師匠の杉本昌隆八段(52)が日刊スポーツに特別メッセージを寄せた。小学1年で出会い、小学4年から師匠として成長を見守り、支えてきた。小学校の卒業文集に「将棋界の横綱になりたい」と書いた少年は師匠も驚く異次元の進化を続ける。

   ◇   ◇   ◇

「九段ですか。私の最終目標だった九段をいとも簡単にというのは、ちょっとずるいですね(笑い)。まあ、それだけ藤井2冠の成長が早いということですね」

プロ入りからわずか4年9カ月で最高位の九段昇段。八段に届かずに引退する棋士も多い中、異例のスピード出世での“師匠超え”、史上初の「10代九段」の誕生に師匠はユーモアたっぷりに祝福した。

昨年、史上最年少の18歳1カ月で2冠獲得後も進化し続ける姿を間近で見てきた。

「成長曲線のどこを切り取っても、急カーブを描いている。いわゆるスランプというのがなく、停滞するところがない。1年前よりもはっきりと強くなっている。昨年の段階でも2年前でも、強かったが、1年ごとに進化していっている。おそらくいまから1年後も、強くなっている。そういう意味で10代は恐ろしいですね」

前期、藤井は渡辺から棋聖のタイトルを奪取した。立場が入れ替わったが、今シリーズは「最強の挑戦者」を相手に「横綱相撲」を見せつけた。

「1局目は渡辺名人がかなり研究していると分かっているのに踏み込んでいき、しかもその研究を上回って勝った。2局目は藤井2冠のスタイルで時間を惜しみなく投入し、終盤の入り口で残り時間はほとんどなかった。形勢は互角。あの展開にして、渡辺名人を相手に勝ちきるというのは、ちょっと信じ難かった」

成長を加速させる大きな決断もあった。1月末、名古屋大教育学部付属高校を自主退学。高校生活にピリオドを打ち、将棋道に専念した。

「学生時代はちょっとたいへんそうだった。午前は休んで午後から学校に行ったり。対局1本にしぼっている棋士に比べれば、大きなハンディだった。いまは自宅で将棋を研究し、対局に臨むということが確立されている。生活リズムが確立されたことも大きいと思う」

王道を歩み続ける弟子を師匠は見守り続ける。【松浦隆司】

◆藤井聡太(ふじい・そうた)2002年(平14)7月19日、愛知県瀬戸市生まれ。5歳で祖母から将棋を教わり、地元の教室に通う。杉本昌隆八段門下。16年10月、14歳2カ月の史上最年少でプロ(四段)に。史上5人目の中学生棋士。17年6月、デビューから負けなしの29連勝で、将棋界の連勝新記録を達成。18年2月、朝日杯で史上最年少の公式戦初制覇。翌年2月、朝日杯連覇。20年7月、17歳11カ月の史上最年少で初タイトルとなる棋聖を獲得。翌月王位も奪取し、今年棋聖を初めて防衛。タイトル通算3期獲得で九段に昇段。20年の獲得賞金と対局料は4554万円で4位。