政府は今月1日に新500円硬貨の流通を開始した。2000年(平12)以来21年ぶりで、側面の一部だけ幅や形を変えた「異形斜めギザ」など、さまざまな偽造防止技術が施されているため、新硬貨の対応をしないと使用出来ない。キャッシュレス化が進んでいることやコロナによる経済状況悪化などにより、各社が取り扱う自動販売機や券売機などの対応速度も、温度差があるのが現状だ。

慎重な姿勢を見せるのはバス会社だ。首都圏大手の小田急バス、東急バス、京王バスなどは、いずれも現段階で未対応だ。小田急バスの担当者は「今後も今のところ考えていない。キャッシュレス化を推奨させていただいております」と説明。東急バスも「費用もかかるので、流通の状況を見ながら」。京王バスも「運賃箱が古くなっているので、代替えのタイミングで、さらに幅広く対応出来る機械を検討」と時期尚早とみている。高齢者の無料乗車を認めている自治体もあることに加え、現金利用者が激減していることも事実。不都合時には運転士が両替するなどして対応する。

一方、JR東日本の全1676駅(BRT含む)の券売機は、ほぼ対応完了している。東京メトロも全180駅で最低1台は導入。東京都が管轄する都営地下鉄、都電、日暮里・舎人ライナー、都営バスは、すべての駅、停留所、車内で、9月までに完全に設置を終えた。コンビニエンスストア大手各社も迅速に対応。日本中央競馬会(JRA)でも競馬場、場外馬券売り場ともにソフト変更し、新硬貨が利用可能だ。

甚大なコロナの影響を受けてきた飲食店は、設備資金投資出来ずに先送りする店舗も多い。利用者に新500円未対応の案内を作成したライブコーヒー築地店では「すでにレジの設定を直してもらおうとメーカーにお願いしているが、まだ連絡がない」と順番待ちの状況。飲料やたばこなどの自動販売機も、まだまだ対応しきれてはいない。【鎌田直秀】