11月9日に心不全のため99歳で亡くなった作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんをしのぶ会が9日、京都市右京区の自宅兼事務所「寂庵」で開かれた。午前中から記帳して開始を待つファンらの列ができ、午後1時の開始時には500人以上になった。ファンらは最後の別れを惜しんだ。

法話の会場などとして親しまれてきたお堂に日本庭園をイメージした祭壇が設けられ、花が飾られ、寂聴さんの笑い声もある法話が流された。2枚の笑顔の遺影は、写真家の篠山紀信さんが19年10月、寂聴さんが97歳のときに撮影したものという。

ファンは焼香をし、笑顔の遺影に手を合わせた。長野県須坂市の植木留美子さん(61)は「遺影はいいお顔をしていらっしゃった。高校の頃からファンで花芯、いずこより、かの子繚乱なんかが好きでした。天衣無縫に生き、自分にうそをつかないところが大好きでした。『ありがとうございました』と言いたいけど、やっぱり寂しい」としみじみと語った。

戒名に当たる法名は「■(■は火ヘンに華)(よう)文心院大僧正寂聴大法尼」。仏門における兄弟子で、妙法院(同市東山区)門主の杉谷義純さん(79)が付けた。「文筆はもちろん宗教家としての心が輝き続け、またいつも華やいで見えた」として、「輝く」「光る」を意味する「■(■は火ヘンに華)」の字を用いたという。