千葉県鴨川市にグランピングのドーム型テント4棟と、プライベートヴィラ2棟を有する「シーサイドテラス千葉鴨川」が12日、開業する。京都府内や兵庫・淡路島など21施設を持つ「マリントピアリゾートグループ」が、初めて関東に進出してきた。

高規格のドーム型テントは冷暖房完備で定員6人。ウイズコロナの中、アウトドアを楽しめ、「蜜を避けられる」という利点がある。また、リゾートワーケーションなどの用途にも向く。フロントに各ドーム専用のトイレとシャワーへルームもある。

同社は2016年(平28)に京都府宮津市で宿泊施設を開業させて以来、車で2時間ほどの距離があり、周囲の観光施設を巡る拠点として宿泊できる場所を選んでいる。今回は、東京都や千葉県、神奈川県から車で訪れることができ、鴨川シーワールド、仁右衛門島、鯛の浦など鴨川市内だけではなく、マザー牧場(君津市)や館山市、勝浦市などまで足を伸ばせる場所として、この地を選んだ。

昨年12月にはシーサイドテラス鴨川と同じ鴨川市内に「プライベートヴィラ藍水」を開業させている。違う宿泊施設として、昨今注目を浴びているグランピングにした。

「グラマラス」と「キャンピング」を合わせた造語の「グランピング」。2015年(平27)に星野リゾートが、山梨県富士河口湖町に「日本初のグランピングリゾート」と銘打った「星のや富士」を開業させたことから広まり始めた。当初は訪日外国人や、30年ほど前に流行したオートキャンプの経験者などがターゲットだった。だが、コロナ禍で訪日外国人は消滅。代わりに家族連れ、大学生のグループや女子会、シニア層など、幅広い層が利用し始めている。

アクティビティーもいろいろだ。ここの場合はマリンレジャーが主体になりそう。同じ千葉市内でも長生村にある施設は「忍者体験」「まき割り」「火おこし」「そば打ち」などが楽しめる。君津市の施設は「温泉」をメーンにしている。中には「サウナ」や、「ペットの同伴OK」という場所もある。

バブル崩壊後、レジャーのキーワードとして「安・近・短・楽(費用が安く、場所が近く、期間が短く、楽しいまたは楽に行ける)」がキーワードになった。今回はこのほか、体験、自然、グループ、アウトドアなど、多種多彩なキーワードが飛び交うだろう。

規模は大小の差があるが、全国に35カ所ある休暇村では、現在25カ所でキャンプ施設を併設している。昨年秋には西武ホールディングスがキャンプ事業への新規参入を明らかにした。鉄道会社や観光施設が、自社保有の夏場のスキー場やリゾート施設に設営する場合もある。

グランピング施設の中には遊休地の利用したり、現存の建造物を転用する例もある。これらが海沿い、山間部、湖畔など、自然の中にあれば、成立する。目的地化しやすいからだ。経済産業省の事業再構築補助金制度もあって、コロナで業績不振に陥った別業種からの進出も目立つ。

全国グランピング協会によると、一昨年までで国内のグランピング施設は約200カ所存在していたという。ホテルや旅館が計約9万軒、キャンプ場が3000カ所あまりに比べたら、まだまだ少ない。

「どんな業種が手掛けてもおかしくはない。新たな宿泊の形を含めた観光、レジャーの形を提案していきたい」。マリントピアリゾートグループの今井裕二取締役(35)は言う。

業界最大手の同社では2022年度に茨城県土浦市、山梨県忍野村、滋賀県高島市などで大小20施設の開業を予定し、年商を50億円規模にするとしている。今井取締役は、「1つの場所を何回も訪れるのではなく、いろいろな場所を回って持ってその土地を楽しんでもらいたい」と期待している。【赤塚辰浩】