北海道・知床半島沖で乗客乗員26人が乗った観光船「KAZU I(カズワン)=19トン」が遭難し、11人が死亡、15人が行方不明となった事故で、運航会社「知床遊覧船」(斜里町)の桂田精一社長(58)が27日、記者会見を開いた。
事故発生から5日目、初めて公の場に姿を現した。出航の経緯などを説明した上で、事故の最大の要因は「私の至らなさ」などと述べた。約2時間半に渡った会見で、3度にわたる土下座をして謝罪した。
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黒のスーツにえんじ色のネクタイで登場した桂田氏は冒頭「皆さん、このたびはお騒がせして大変申し訳ございませんでした」と謝罪。約10秒間額を床につけ土下座をした。
桂田氏は事故が起きた最大の原因を聞かれると、20秒ほどの沈黙後、「実際に事故が起きております。私の至らなさだと感じております」と語った。「至らなさ」の具体的な内容を問われても「事故の原因もわからないというところです」と言葉少なだった。
23日の出航を決めた経緯については、午前8時に豊田徳幸船長と打ち合わせし、午後から天気が荒れる可能性があるが、午前10時時点で豊田船長から出航が可能との報告があったと説明。報告をふまえ、「海が荒れれば引き返す」という条件付きで桂田氏が出航を決定したという。ただ、引き返す基準について問われると「船長判断なので、ございません」。責任逃れともとれる説明もあった。
当日午前8時半ごろには、社内の他の船長から、会社の無線アンテナが故障しているとの報告があり、修理を依頼。携帯電話や隣接する他の運航会社の無線でやりとりが可能だったため、出航を取りやめる判断には至らなかったという。桂田氏は「最終的に判断は全て私であります」とし「今となれば判断的に間違っていたと感じています」と語った。
23日は朝から波浪注意報、強風注意報が出ており、午後から漁業関係者全てが港に引き返すほどの荒れる海が予想されていた。記者から天気図が読めるかを聞かれた桂田氏は「読めます」と回答。見誤ってないかと詰められると「自然現象なので、常に天気図が正確ということではない」などと続けた。また、出航の判断を行う安全管理規定については「<1>波1メートル以上で欠航<2>風速8メートル以上で欠航<3>視界が300メートル以上ないと出航出来ない」と説明。しかし、その後は安全管理規定に「数値は出ていない」とも話した。
会社の運営について、船長の豊田氏は3月に、SNSで「ブラック企業で右往左往です」と投稿していた。桂田氏は「ブラック企業…私は分かりません」と答えた。【沢田直人】
◆運航会社「知床遊覧船」が配布した事故発生までの経過説明(要約)
▼21年5月 KAZU1が船首を海上浮遊物と接触する事故。運航していた船長は豊田氏ではない
▼同6月 船尾を暗礁に擦る座礁事故。運航していたのは船長の豊田氏
▼同7月 造船会社に修理に出した。修理後JC1の検査を受けて合格(書類等はKAZU1の船中)。(※修理状況は資料の写真参照)その後、北海道運輸局から当社に対し上記2事故に関する行政指導。当社からは改善報告書を提出
▼22年1月~ シーズンに向けて陸に上げ、造船会社に船の整備を依頼
▼4月15日 整備が完了し港においた。その後複数回テスト走行
▼20日 日本小型船舶検査機構の中間検査受け合格(書類等はKAZU1の船中)
▼21日 KAZU1が他の運航会社3社とともに事故を想定した救助訓練。海上保安庁の定期な安全点検が行われ、救命胴衣、船体の検査。船体の亀裂等の指摘はなかった
▼22日 豊田船長が他社の方と海上の漂流物を確認するために安全確認の運航。23日のコースと同様
▼23日午前8時ころ 豊田氏から午後の天気が荒れる可能性があるが、午前10時からは出航可能との報告あり。海が荒れるようであれば引き返す条件付き運航を打ち合わせ、当日の出航を決定
▼午前8時半 当社の他の船長から当社の無線のアンテナが故障している報告があり、業者に修理を依頼。携帯電話や隣接する他社の無線でのやりとりも可能であるため、出航を停止する判断はしなかった
▼同10時 ウトロ港を出港
▼午後1時13分 他社に無線連絡「今カシュニの滝だけど戻るのが遅れます」
▼1時18分 他社に無線連絡「船首が浸水している」等の援助を求める連絡。他社は海上保安庁に救助要請。KAZU1はその後海上保安庁とやりとり
▼同4時半ころ 海上保安庁航空機などが現場到着し、救助活動を開始
◆旅客船の運航可否とルール 国土交通省海事局安全政策課によると、旅客船の運航規準は海上運送法に基づいて、事業社各社がそれぞれの海の状況や航路を鑑みて「安全管理規定」を定め、国交省に提出をするとしている。各社が船の出航可否のルールづくりをすることになり、違反をすれば行政処分の対象となり、100万円以下の罰則もある。

