藤井聡太棋聖(竜王・王位・叡王・王将=19)が永瀬拓矢王座の挑戦を初めて受ける、将棋の「第93期ヒューリック杯棋聖戦5番勝負第2局」(産経新聞社、日本将棋連盟主催)が15日、新潟市西蒲区「高志の宿 高島屋」で行われた。対局は藤井が永瀬を下し、対戦成績を1勝1敗とした。第3局は7月4日、千葉県木更津市「龍宮城スパホテル三日月」で行われる。

負ければかど番に追い込まれる一戦で、藤井が踏ん張った。高島屋は1996年(平8)の第67期棋聖戦5番勝負第5局で、7冠すべてを保持していた羽生善治棋聖(当時)が三浦弘行五段に敗れ、6冠に後退した舞台でもある。

この日の勝利で通算269勝54敗としたが、テレビ棋戦の事前収録も含めて公式戦の連敗はわずか7回しかない。将棋界の歴史が大きく動いた対局場で、初のタイトル戦連敗を免れた。

練習パートナーとして一緒に研究会を行う永瀬は、「全体で見た時に、悪いところをしっかり見るタイプ。結果が出たとしても満足せず、99納得しても1を掘り下げてくるのが明らかに分かる」と5冠を分析する。開幕局での反省を第2局では明らかに生かしてきた。

来週22日には渡辺明名人への挑戦権を争うA級順位戦の初戦、佐藤康光九段戦がある。日本将棋連盟が名古屋市に開設する「名古屋将棋対局場」のこけら落としとして、用意された。今期A級に昇級したばかり。「1年かけて戦っていくうえで、1回戦は大きな意味を持つ」と先週10日に同市内で行われた祝賀会でも話していた。

場所は、JR名古屋駅前の「ミッドランドスクエア」25階にあるトヨタ自動車の会議室だ。このほか、叡王戦は中部電力、豊田自動織機、豊田通商が協賛、王座戦は東海東京証券が特別協賛と、名古屋に本社を構える企業が名を連ねている。地元財界の期待を背に、ホーム戦でも勝って、棋聖防衛にはずみをつけたい。

◆棋聖戦 将棋の8大タイトル戦の1つ。1962年(昭37)創設。初代棋聖は、故大山康晴十五世名人。94年度までは半年に1回開催されていた。20年に藤井が17歳11カ月で初のタイトル挑戦、初タイトル獲得を果たすまで、屋敷伸之が第55期(89年度後期)で17歳10カ月24日の最年少挑戦記録を保持。次の第56期(90年度前期)で屋敷は18歳6カ月と当時の最年少記録で初タイトル獲得という舞台になっていた。95年度から年1回に。96年度は当時7冠すべてを保持していた羽生善治現九段が今局の対局場となった「高島屋」で三浦弘行現九段に敗れ、6冠に後退した。「棋聖」は将棋、囲碁で抜群の才能を示す者への敬称。将棋では江戸時代末期の不世出の天才棋士、天野宗歩(あまの・そうふ)がこう呼ばれた。【第93期ヒューリック杯棋聖戦5番勝負日程】

▼第3局 7月4日、千葉県木更津市「龍宮城スパホテル三日月」

▼第4局 7月17日、名古屋市「亀岳林 万松寺」

▼第5局 7月27日、静岡県沼津市「沼津御用邸東附属邸第1学問所」