遊説中の安倍晋三元首相が凶弾に倒れ、急逝するという衝撃は選挙戦、10日に迫った投開票に波紋を呼ぶのは必至だ。岸田文雄首相は、この日午後の遊説予定をすべてキャンセルして帰京した。自民党の茂木敏充幹事長ら幹部も遊説先から緊急帰京し、緊急役員会を招集して今後の対応などを協議した。

銃撃事件を受けて自民、立憲民主党などは、8日午後の遊説を軒並み自粛したが共産党、れいわ新選組、社民は安倍氏の銃撃後も党首らの遊説を行った。だが、自民党は選挙戦最終日の9日は最後の訴えを再開する。茂木氏は「暴力には屈しないという断固たる決意の下、選挙活動は予定通り進めることにした。また活動にあたっての安全確保に十分、留意しての対応の徹底を指示した」と述べ、岸田氏は9日、山梨、新潟両県で遊説を行う。公明党も同様の方針を固めた。

立憲民主党も党本部で最終日の選挙戦について協議し、泉健太代表は「民主主義の根幹である選挙をやり切る」と立候補者らに安全を確保した上で活動継続し、幹部による遊説も予定通りに実施するとした。

安倍氏を襲った暴挙に、非難と哀悼が広がった。公明党の山口那津男代表は「言論封殺をはね返し、有権者に訴えたい」とした。日本維新の会の松井一郎代表は「民主主義の根幹である選挙の期間中に暴力をもって言論を封じられることは絶対にあってはならないことです」などと声明を発表し、9日は遊説を再開する。共産党の志位和夫委員長は「安倍晋三氏とは政治的立場を異にしておりましたが、同年に生まれ、当選も同期で、同時代を生きたものとして、そのご逝去は、とてもさみしく、悲しい思いです」などとコメントした。

岸田内閣は安定した支持率の高さで選挙戦の勝敗を左右する選挙区で32ある「1人区」でも自民優勢の情勢だが、安倍氏の銃撃死という異例中の異例の展開は国民の審判にどのような影響を与えるだろうか。

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