ジャーナリストの大谷昭宏氏(77)の目

   ☆   ☆   ☆

今回の事態は、日本の政治において、大変な重大事件だ。一国の元総理が凶弾に倒れた。民主国家というのは、選挙制度と言論の自由の2つだけに支えられている。「選挙期間中に言論の自由に銃弾を撃ち込まれた」。この1点をもって、これがまかり通ってしまえば、もはや民主国家ではなくなってしまう。元総理の命と同時に日本の民主主義は奪われた。

奈良県警や警視庁のSP(セキュリティーポリス)にしても、こういう事件が起きてしまったという事実をもって、万全の警備ではなかったというのが自明の理。そもそも、安倍さんは前総理ではなく元総理。元総理の場合は、本人から警護の申し出があって、警視庁がSPをつける。

一方、奈良県警にしてみれば、前の晩に(安倍元総理の予定が決まり)直前に言われても、どれだけ警護できるのか-という面もあり、結果論だけで、声高に警備不足を唱えるのは厳しい面があるかもしれない。

SPが銃弾を防ぐかばんを持っているのが、動画でも流れていたが、それも機能していなかった。

そもそも、安倍元総理は数年前、秋葉原で「安倍やめろ」とヤジを受け、19年には札幌市での街頭演説中にも同じく「安倍やめろ!」との声を受け、発した男性が警察に強制排除されたことがあった。

以来、安倍元総理の警護は「プラカードやヤジを取り締まれ」が中心になり、背後の警備への意識が薄れてしまっていたかもしれない。

犯人については動機も不明で、捜査情報を待ちたいが、自作という銃については驚かされた。ビニールテープでぐるぐる巻きになったような銃で、よく銃身が飛ばずして発射できたものだと、驚きを禁じ得ない。相当な技術ではないかと思う。これからの捜査で、そうした情報にも注視したい。

 

【関連記事まとめ】安倍晋三元首相67歳で死去 奈良で街頭演説中に背後から銃撃>>