東京五輪、パラリンピックを巡る汚職事件で、大会組織委員会元理事・高橋治之被告(78)に対する贈賄罪に問われた紳士服大手「AOKIホールディングス」前会長の青木拡憲被告(84)ら3人の初公判が22日、東京地裁(安永健次裁判長)で開かれ、3人は「間違いありません」と起訴事実を認めた。

証拠採用された供述調書などから生々しい舞台裏が明らかになった。AOKIは高橋被告から通常15億円のティア3の大会スポンサー契約が7億5000万円でできると持ち掛けられ、「それはすごい。ぜひお願いします」と飛び付いた。高橋被告と月100万円のコンサルタント契約を結ぶと、前会長は「こっちは高い金払ってるんだから、ダメ元でもいいから何でもお願いしてみろ」と元専務執行役員の上田雄久被告(41)に命じた。ライセンス販売契約をメンズだけでなく、レディースにも拡大し、大会延期による追加協賛金1億円の支払いを1000万円に減額してもらうなどの便宜を図ってもらっていた。

今年4月、東京地検特捜部が捜査に乗り出していることが明らかになると、前会長は「危ない物はシュレッダーにかけろ」「手帳も燃やせ」と上田被告に命じた。当時のことを検事から質問されると、前会長は「私にとって青天のへきれきで、気が動転していた」と釈明した。大会組織委の森喜朗前会長の名前も出た。「森会長がスポンサーの決定を一任されている。森会長の誤解を解くことが必要。面会した方がいい」と高橋被告に勧められ、17年6月、会食。誤解を解き、好感触を得たと明かした。

AOKIが支払った7億5000万円のうち2億5000万円は競技団体の強化費用の名目だったが、高橋被告に渡った。検事から「『(AOKIから)何使ってもいいと言われた』と高橋被告は供述している」と質問されると、前会長は「一切ございません」と全否定した。

高橋被告には5ルートから計1億9800万円の賄賂が渡り、15人が起訴された。一連の事件で公判が開かれるのは初めて。前会長らの証拠調べはこの日で終わり、来年2月1日の次回公判で最終弁論、論告求刑が行われる予定。