大阪湾の淀川の河口付近で9日に見つかった体長約8メートルのクジラは10日、大きな動きを見せずに回遊を続け、大阪海上保安監部が巡視した。

海上保安監部によると、クジラは発見された当初の場所にとどまり、時折尾びれを動かしたり、潮を吹いたりした。担当者は「警戒を続けて関係機関と対応を協議する」と話した。

クジラの生態に詳しい大阪市立自然史博物館外来研究員の鍋島靖信さん(69)は「マッコウクジラの雄の可能性が高い。体が弱って迷い込んできたのではないか」と推測した。鍋島さんによると、現場付近は干潮時に深さ約2~3メートルになる。マッコウクジラは深海にいる大きなイカなどをエサとしており、浅瀬ではエサを捕ることができないという。鍋島さんは「養分を蓄えているので、1週間ほど食べなくても大丈夫」と説明。その上で「今は体を休めている状態で、よくなったら自然と泳いで帰る。無理に沖に動かさないほうがいい」と指摘した。09年には、和歌山県田辺市の内之浦湾で、迷い込んだマッコウクジラが約3週間とどまった後に、自力で湾外へ脱出した例があるという。

現場から約400メートル離れた大阪市西淀川区の阪神高速湾岸線中島パーキングエリアでは、親子連れなど約100人が集まった。子どもが「淀ちゃん」と愛称で呼ぶなど、クジラの様子を見守っていた。【沢田直人、清水貴仁】