安倍晋三元首相銃撃事件で、約5カ月に及ぶ異例の長期鑑定留置を経て、山上徹也容疑者が殺人罪などで起訴された。山上被告の伯父(77)によると、鑑定留置されていた大阪拘置所には現金や服、菓子、書籍などの差し入れが続々と届いていた。

山上被告の父親の兄で元弁護士の伯父は「刑を終えた後に使ってほしいと現金を差し入れる方が多かった」。高校は奈良県内の有数の進学校に通っていたが、母親が旧統一教会に入信し、自己破産するまで献金を続けたため、経済難から大学進学を断念した。3年間の海上自衛隊勤務を経て、アルバイトや派遣社員を転々とした。「『出所したら行けなかった大学へ行ってほしい』と現金50万円を現金書留で送ってくる人もいた」。50万円は見ず知らずの人からの差し入れだったという。

全国から衣服やお菓子などの差し入れも絶えず、被告が入っていた単独房に収容し切れないほどの量だったため、伯父は「徹也から『送ってもいいか』という連絡があったので、賞味期限のあるお菓子や食品などは自宅の倉庫に保管しています」と話した。

大阪拘置所では、事件を報じる新聞や雑誌を丹念に読み込み、旧統一教会を巡る国の動きにも関心を示していたという。山上被告は宅地建物取引士など複数の資格を持っており、実用英語技能検定(英検)1級の資料や英和辞典の差し入れもあった。

山上被告の母親は昨年8月、事件後に身を寄せていた伯父の家を離れた。伯父は「あれ以降、連絡はない」と話した。【松浦隆司】