将棋の最年少5冠、藤井聡太竜王(王位・叡王・王将・棋聖=20)が15日、名古屋市「名古屋国際会議場」で行われた第16回朝日杯将棋オープン戦本戦トーナメント(T)準々決勝で、後手の増田康宏六段(25)を169手で下し、ベスト4に進出した。この日の2局はいずれも藤井が先手番となり、これで先手番での連勝記録を「20」に伸ばした。

午前の本戦T1回戦では阿久津主税(ちから)八段(40)に逆転勝ち。地元・愛知のファンが見つめる公開対局で、いずれも逆転勝ちで1日2勝を挙げ、2年ぶり4度目の優勝へ好発進した。2月23日、東京・有楽町朝日ホールで行われる準決勝で豊島将之九段(32)と対戦する。

増田戦の戦型は角換わり。開始から約20分で最終盤に突入し、両者とも持ち時間の40分を使い切って1分将棋となった。藤井は「お互いの玉が寄るか寄らないか激しい展開になり、判断のつかない局面が多かった。負けの局面もあったとも思うが、何とか食いついていければと思ってやっていた」と振り返った。

劣勢から怒濤(どとう)の王手を連発し、大逆転につなげた。対局場にいた約190人が超ハイレベルな攻防戦を固唾(かたず)をのんで見守った。

15日に放送されたNHK杯3回戦では佐藤天彦九段を下し、自身初のベスト8入りを決めた。朝日杯と合わせ「1日3勝」と破竹の勢いだ。先手番では圧倒的な強さを誇る。これで先手番は20連勝。本年度は先手番で敗れたのは6月の棋聖戦5番勝負第1局、永瀬拓矢王座との千日手再指し直し局のみだ。将棋では先手番が若干、有利とも言われるが、20連勝は驚異的な数字だ。これで直近10局は9勝1敗。5冠を堅持しながら勝率は8割を超える。

現在、羽生善治九段(52)の挑戦を受ける、第72期ALSOK杯王将戦7番勝負を戦っている。将棋界のレジェンドとの「世紀の一戦」では、第1局を勝利した。王将戦第2局は21日から大阪・高槻で始まる。20歳が絶好調モードに入った。【松浦隆司】