陽気な水兵さんをイメージシンボルにする人気アパレルブランド「セーラーズ」社長の三浦静加さん(69)が2月28日、4月に実施される統一地方選の東京・世田谷区議選(4月16日告示、同23日投開票、定数50)への立候補を表明した。19歳で起業して昨年が節目の50年。シングルマザーとして脳性まひの1人娘(23)を育てながら、91歳の母親の介護に奮闘している経験を区政に反映させたいと意気込んでいる。

選挙に出馬するのは初めてではない。2017年7月、世田谷区から東京都議選に打って出たが落選した。「あの時は娘の存在を公表して、障がいのある子どもとの生活を知ってもらいたいのが一番で、正直、政治のことがよく分かっていなかった」と振り返る。「街頭演説でも有権者の方に『あなたは結局、何がやりたいんだ』と詰め寄られても返す言葉すらなかった」と語った。

都議選の時は娘の世話をしてくれた母親が、今では認知症が進行し要介護5になってしまった。娘と母の“ダブル介護”を経験し、障がい者本人に行政は対応しても、介護する家族をケアできる現状にはないことを痛感したという。「支える家族に寄り添う制度がない。困っている人はいっぱいいるけど、そこに着目する区議はいない。だから私がなろうと思う」。三浦さんは真剣な表情で訴える。スローガンは「あなたの困っている。を解決する」と決めた。

柱となる政策は4本。<1>介護をする家族のサポート環境をつくる<2>学業ややりたいことに専念できずに生活に追われるヤングケアラーを支える<3>世田谷区内に多い変形5差路などの危険道路の安全対策<4>都会型の新たなふるさと納税の創出。「世田谷は区議は50人。区政が見逃しているエリアに踏み込んでいきたい」と力を込めた。

最後に三浦さんは「なんで『困』という字になるか分かりますか?」と問いかけてきた。どうやら街頭演説で使う「ネタ」のようだ。「自由に伸びていく木の枝が何かに囲われて成長できないから『困る』んです。私はその囲いを取り払っていきたい」とニコっと笑った。

約6年前の選挙をともに戦った会社スタッフと、毎晩のように討議をし、ホワイトボードは区議選へのアピールポイントがぎっしり。「地域で埋もれているみなさんの声をどれだけ拾えるか、です。会社運営で培ったノウハウを生かして誰もが主役になれる区政を実現したい」と瞳を輝かせた。【寺沢卓】

◆三浦静加(みうら・しずか)1953年(昭28)4月12日、埼玉県和光市生まれ。19歳で東京・江古田でジーンズショップを始める。84年にアパレルブランド「セーラーズ」を渋谷にオープン。85年、人気アイドルグループ「おニャン子クラブ」の公式衣装に採用され、マイケル・ジャクソンらも愛用する大人気に。99年5月、46歳で長女を出産するが1歳の時に脳性まひと診断される。17年の東京都議選で世田谷区から出馬したが落選した。